〜アジア市場における「体験的価値」の復権と、日本企業の構造的課題〜
■日本の「脳」vs アジアの「体」
2025年12月、クアラルンプール。「第20回マレーシア国際ブランディングショーケース(MIBS 2025)」の会場。 このカオスな空間に身を置いた時、私は日本企業が陥っている「不全」の正体を突きつけられた。

それは、「脳内マーケティング(Brain Marketing)」への過剰適応だ。 今の日本企業は、緻密な成分配分比率や特許技術を並べ立て、有名女優やタレントを起用したイメージ戦略を組み、物流オペレーションを最適化し、洗練されたデザイン調整でパッケージを整えることに全精力を注いでいる。 つまり、「消費者の脳内に、いかに綺麗な虚像(ブランド)を構築するか」という情報戦に終始しているのだ。
しかし、ここマレーシアの現場は違う。 ここにあるのは、「飲んだ瞬間に体が熱くなるか」「その場で商売になるか」という**「物理的リアリティ(Physical Reality)」**だけだ。 脳を説得する前に、肉体を納得させる。 本レポートは、この「脳 vs 体」の決定的な違いを、会場の全出展企業の解析を通じて解き明かすものである。
第1部:【Health & Wellness】「エビデンス」ではなく「衝撃」を売る
日本のヘルスケアが「機能性表示」という情報の檻に閉じこもる中、ここでは「体への体感認知」が行われている。
1. Das Abdul Global Sdn Bhd (ブランド名:DasLega)

1. 【Grand Highlight】Das Abdul Global Sdn Bhd (ブランド名:DasLega)
〜成分表を飲むな、生命力を飲め。〜
製品名: Botanical Beverage Garlic Lemon Shot
カテゴリー: 健康飲料(Botanical Beverage)
【1】製品解析:暴力的なまでの「体感リアリティ」 私が試飲した瞬間、喉の奥から食道にかけて、カッと焼けるような熱さが走った。 それは決して不快なものではない。滞っていた血流がドクドクと音を立てて回り出すような、強烈な**「生命力の流入」**だった。
成分表を見て驚愕した。そこには、日本のサプリメントに見られるような「難解な化学成分」や「抽出エキス」の文字は一つもない。
Halia (生姜)
Kunyit (ウコン)
Bawang Putih (ニンニク)
Lemon (レモン)
Madu (ハチミツ)
Cuka Epal (アップルサイダービネガー)
Lada Hitam (黒胡椒)
ただそれだけだ。 彼らは、マレー文化圏に根付く**「Buang Angin(体内の余分な風・ガスを抜く)」という伝統的な健康観を、現代のボトルにそのまま封じ込めている。 日本企業なら、ここで「飲みやすく味を調整」し、「有効成分◯mg配合」とスペックを謳うだろう。しかしDasLegaは違う。「素材の味と刺激(辛さ・熱さ)」をそのまま残すことで、「これは効く」という物理的な確信を顧客の肉体に直接叩き込んでいる**のだ。 「脳」で理解させる前に、「体」を納得させる。これがアジア流の「肉体リアリティ」だ。

【2】販売戦略:CEOが「歩く放送局」になる ブースの前で足を止めた私に、CEOのTuan Das Abdul氏が声をかけてきた。 彼は英語が堪能なわけではない。私もマレー語は分からない。 しかし、そんなことは関係ない。彼はスマホを取り出し、その場でTikTokライブを始めた。
「日本のゲストが来たぞ!」 画面の向こうにいる数万人の視聴者に、私を紹介し、商品を飲ませ、そのリアクションを配信する。 彼は**「社長」であり、「トップセールス」であり、「インフルエンサー」**なのだ。 日本の社長が会議室で稟議書にハンコを押している間に、彼は現場で汗をかき、通りがかりの外国人と肩を組み、その熱狂をデジタルで拡散し、商品を「手売り」している。もちろんTiktokshopでの販売も行っている。自社ドメインサイトにこだわる日本メーカーにこのスピード感はない。

【3】結論:DasLegaが教える「勝者の条件」
言葉はいらない: パッションとボディランゲージがあれば、商談は成立する。
綺麗事はいらない: 整えられたカタログよりも、その場のライブ感が人を動かす。
調整はいらない: 完璧な商品を作るより、圧倒的な「体感」を作れ。
DasLegaのブースには、日本企業がこの20年間で置き忘れてきた「商売の野性」が、極めて純度の高い状態で保存されていた。でも絶対条件としてこの商材は商品が良い。体感して感動する。原料が素晴らしい!
2. Simpulan Emas Sdn Bhd (ブランド名:Need Lee)
- 製品: Need Lee Propolis Liquid (婆羅洲黄金蜂膠)
- 解析: 「Need Lee Propolis Effects on Diabetes(糖尿病への効果)」というパネルを堂々と掲示。「薬機法」という脳内ルールに縛られる日本企業には不可能な、切実な悩み(痛み)への直球訴求。喉スプレーや原液など、プロポリスを「万能薬」として展開。


3. BioCoLex Group (Ningxia Rongbin Biotech)

- 製品: Luteolin, Nervonic Acid (神経酸), DihydroquercetinBioCoLex Group は、植物エキスからペプチド、モノマー化合物まで幅広い原料を製造し、同時に錠剤・ドリンク・ソフトゲルなど多様な製剤の OEM/ODM に対応する一貫型サプライヤーである。原料抽出、標準化、品質検査、中間製品化、最終製剤までを自社で完結できる点が最大の強みで、短納期かつ小ロットでのブランド立ち上げに向く。世界の健康食品産業では、こうした“原料 × 製造”を兼ねる企業が多くのブランドの裏側を支えており、東南アジア市場における機能性食品の成長を下支えする存在となっている。
- 解析: 中国・寧夏からのB2B原料供給。「神経酸」など脳機能に関連する高機能成分を、マレーシアのOEM工場へ供給。日本のサプリメーカーが「差別化成分」を探している間に、彼らはサプライチェーンの根元を押さえている。
4. Tongxiang Yuandong Environmental Protection Products
- 製品: NAD+ Supplement, Home IPL Hair Removal Device
- 解析: 「長寿遺伝子(NAD+)」や「脱毛」といった、世界共通の富裕層の欲望(若さ・美しさ)にフォーカス。特許証(専利証書)を壁一面に貼り出し、信頼性を物理的な量で示している。

TONGXIANG YUANDONG PRODUCTS(浙江省)は、美容成分の原料供給と美容デバイスOEMを両立する“ハイブリッドOEMメーカー”。
ブースには EGT や NAD+ といった抗酸化・アンチエイジング系の原料パネルが並び、
同時に美顔ローラーや温熱ケアデバイスなど小型美容家電も展示。
原料から完成品までワンストップで扱える点が大きな強みとなっていました。
浙江省政府の輸出支援パビリオンの一角として参加しており、
価格帯・量産力・開発スピードのすべてで「海外ブランドのOEM先候補」として存在感のあるブースでした。
5. Golden Face (M) Sdn Bhd (ブランド名:Gray Bottle)
- 製品: High-Tech Underwear (黒科技内庫)
- 解析: フェムテック吸水ショーツ。バレリーナのビジュアルで「動きやすさ・自由」を表現。”Rapid absorption”(急速吸収)という機能的価値を、生理用品の棚ではなく「ファッション」の文脈で提案している。
6. Bio Health Doctor
- 製品: Thermal Therapy Mat, Bio Health Queen Belt
- 解析: 「寝ているだけで健康になる」温熱マット。ブースで実際に客を寝かせ、温かさを体験させる。高齢者層の「冷え」という物理的な不快感を解消することで、高単価商品をクロージングする。

BIO HEALTH DOCTOR は、遠赤外線ヒーターや温熱ベルトなど、
体の深部を温めて血行改善・痛み緩和を狙う“温熱療法デバイス”を専門とするブランド。
韓国系メーカーらしく、医療・美容の両面からアプローチする機器が多いのが特徴です。
ブースでは特に次のような製品が目を引きました。
■ 展示されていた主力デバイス
- 遠赤外線 LED パネル(腹部・腰部を温める大型加温器)
- 温熱ベルト(Beauty & Health Incubator)
腰痛・生理痛・胃腸不良などの「芯の冷え」を改善する目的のアイテム - 局所温熱パッド(首・肩・膝・腰などの部位専用)
- 赤外線治療ライト(血流促進を狙う医療系ライト)
どれも共通して “深部加熱(Deep Heating)” をコンセプトにし、
東南アジアの中高年層に特に人気があるカテゴリーです。
■ ブースの特徴と雰囲気
- 実際に座って体験できる“実演型”
- 腰痛・膝痛で悩むシニア層が列を作る人気
- 説明スタッフが血行改善や自律神経調整などの健康効果を詳しく解説
- 体験後にそのまま購入する人も多い“即売スタイル”
「10分だけ当ててみて」と試した来場者が「温かさが全然違う」と驚いていたのが印象的でした。
■ ブランドとしての位置づけ(分析)
BIO HEALTH DOCTOR は、
マッサージ機器と医療補助デバイスの中間に位置する“ホームヘルスケア”ブランド。
同社の強みは以下の通り:
- 韓国メーカーが得意とする温熱技術
- 健康意識の高い層に刺さる“家庭用で手軽に使える”デザイン
- 実演販売との相性が非常に良い
KLやシンガポールのショッピングモールにも、
同様の気功・温熱デバイス系ショップが出店しているため、
マレーシア市場でも十分に売れるカテゴリだと感じます。
7. Molishidai (茉莉诗黛)
- 製品: Jasmine Skincare Masks
- 解析: ジャスミン(茉莉花)に特化したスキンケア。緑色のパッケージとディスプレイで統一し、視覚と嗅覚から「自然派」を訴求。成分のスペックよりも「香りの癒やし」を売る。
ボタニカル成分を軸にした自然派スキンケアブランドの世界観
このブースは、植物抽出エッセンスを中心に展開する自然派スキンケアブランド
MOLISHIDAI(茉莉诗黛) の出展。
淡いグリーンを基調にした世界観で統一され、
化粧水・洗顔・精華液・クリーム・ハンドメイド風ソープなど、
“自然に寄り添うスキンケア” をテーマにした幅広い商品ラインが並んでいた。
印象的だったのは、
スキンケアの横にハーブ素材や乾燥花を配置し、
「香り」「癒し」「植物成分」 を視覚的に伝える展示演出。
パッケージのデザイン性も高く、
ライブコマースやSNSで映えるブランドとしての完成度が非常に高い。

実際、ブースのスタッフは製品の質感や香りを丁寧に説明しながら、
“植物本来の力をそのまま肌へ届ける” というブランドストーリーを強調。
マレーシア市場でも人気の高い「ナチュラル・クリーンビューティ」系の流れを取り込んだ、
現代的なボタニカルスキンケアブランドだった。
8. Guangdong Yuwei Pharmaceutical (広東粤威製薬)
- 製品: Tiger Plaster (風湿膏), Pain Relief Patch
このブースは、広東省の中医薬メーカーによる外用鎮痛パッチ(膏薬)シリーズの展示で、伝統医学の概念である“活血化瘀”や“祛風湿”に基づく貼付剤をサイズ・用途別に数十種並べている。虎のシンボルは、筋骨強化や通絡作用を象徴する中医薬文化の定番モチーフであり、ブランドの歴史性と効能イメージを視覚的に訴求する役割を持つ。外用貼付剤は国際規制が比較的緩いため、中国・東南アジア・中東・アフリカで広く輸出される“グローバル中医薬”の代表的カテゴリであり、展示会でも最もバイヤーが集まりやすい商品群となっている。
- 解析: 虎の絵が描かれた鎮痛パッチ。説明不要の「強そう・効きそう」なビジュアル。腰痛や関節痛という物理的な痛みを抱える層に対し、最強のアイコン(虎)で解決策を提示。

9. Herbal Eye Mask (珍其道)
- 製品: Herbal Eye Mask+ (草本清涼保健眼罩)
- 解析: スマホ社会の現代病「眼精疲労」をターゲットにした漢方アイマスク。その場で開封し、香りを嗅がせる実演販売。小さな商材だが、回転率が高い

このブースは「中医薬外治法」と「美容ヘルスケア」を融合したサロン向けソリューションで、単なるアイマスク販売ではなく、施術デモ・ビフォーアフター写真・加盟支援を組み合わせた“中医美容パッケージ”を提供している。展示されていた『Herbal Eye Mask』は菊花や薄荷などの清涼成分を使った眼部ケア用パックで、眼精疲労やむくみの緩和を目的とした養生アイテム。大量のビフォーアフター写真は、中医外治法(刮痧・拔罐・温灸など)の即効性を視覚的に示し、サロン経営者に「導入すればすぐに結果が出る」ことを訴求する営業手法である。製品単体ではなく“施術+教育+物販”をセットにしたビジネスモデルが特徴で、典型的な中国のヘルス&ビューティー系フランチャイズ型の展示ブースといえる。

10. Hongshou (HS) / Zhou Tianji (周天済)
- 製品: Ganoderma Spore Powder (霊芝胞子粉), Coffee
- 解析: 霊芝(レイシ)を使った健康食品とコーヒー。カプセルマシンも展示し、日常のコーヒー習慣の中に漢方を取り込ませる戦略。
11. Nutrima
- 製品: Roselle Concentrated Drink
- 解析: ローゼル(ハイビスカスの一種)の濃縮ドリンク。マレーシアで馴染みのある健康食材を、モダンなボトルで製品化。
12. Meng Onn Medical (明安薬行)

- 製品: Wild Oud Liquid Soap (Nabourish)
- 解析: 伝統的な漢方薬局が開発した、沈香(Oud)入りボディソープ。高価な香木を日用品に落とし込み、富裕層向けのプレミアムラインとして展開。
Meng Onn Medical —— マレーシア中医文化を象徴する老舗ブランドの総合薬膳ブース
このブースは、マレーシアで長年親しまれている中医薬店 明安藥行(Meng Onn Medical) による出展。
薬膳スープセット、選りすぐりの漢方素材、そして沈香(Agawood)オイルまで、
“伝統 × モダン養生” をテーマにした幅広いラインアップが並んでいた。
とくに目を引いたのは、テーマ別に調合された薬膳スープセット。
枸杞子、紅棗、黄耆、百合などの素材が美しくパッケージングされ、
お湯で煮込むだけで家庭で本格薬膳が味わえる。
都市生活者が求める「手軽で本格的な養生フード」として、非常に完成度が高い。
さらに会場では、乾物・生薬素材を自由に組み合わせて選べる陳列も。
薬膳カフェやTCMクリニック、スパなど、
**業務用需要を意識した“プロ向けの見せ方”**にもなっており、
伝統的な漢方店の進化形を感じさせる展示だった。
右側に並んだ沈香(Agarwood)オイルは高級感があり、
香りによるリラクゼーションと中医養生を融合した“新しいウェルネス提案”として
アジアで伸びつつあるカテゴリー。
Meng Onn Medical の取り扱い領域の広さを象徴していた。
全体として、
中医薬 × 薬膳 × 香り × ギフト
という多層的なウェルネス市場をまとめて押さえた、
非常に完成度の高いブースだった。
13. Iputtra Science and Management

- 事業: Therapist & Nutritionist Training
- 解析: モノではなく「資格・技能」の販売。健康市場の拡大で不足する「施術者」を育成するビジネス。
I Puttra Science and Management College は、医療リハビリ、AI灸療、伝統リハビリ分野の TVET 資格を提供するマレーシアの職業教育校である。高齢化と医療観光が進む東南アジアでは、理学療法士の補助業務や AI 搭載施術機器のオペレーター、伝統療法のセラピストといった準医療職の需要が急拡大しており、本校の短期集中型プログラムはその人材不足を補う実践的な内容となっている。AI を活用した温灸療法や伝統医療は、技術と文化が融合する東南アジアならではの成長市場であり、医療・ウェルネス産業で働きたい人にとって現場に直結するスキルを得られる講座である。
14. Sompoton Spa Academy
- 事業: Spa Training Course
- 解析: マレーシアの観光資源であるスパ産業の人材育成。

【展示レポート】SOMPTON SPA ACADEMY ― マレーシアのスパ業界を支える教育機関とウェルネス製品の融合
美容・ウェルネス系の出展が多い MIBS 2025 の中でも、
プロフェッショナル向けの本格派として存在感を放っていたのが
SOMPTON SPA ACADEMY のブース。
ここは単なるスパ製品ブランドではなく、
ヘッドスパ、睡眠改善、アロマセラピーなどの施術技術を
教育・資格・ワークショップの形で提供するスパアカデミーだ。
会場では “Sleeping Wellness Head Spa” が強力に推されており、
頭皮ケアと香りによるリラクゼーションを組み合わせた、
東南アジアで今一番伸びている施術カテゴリが中心。
スパ開業者向けのプロトコル提供や、
シャンプー・精油製品のセット販売など、
教育 × 施術 × 商材販売 の一体型モデルを強く打ち出していた。
スパ業界のプロ志向が高まるマレーシアらしい、
“技術の底上げを担うブース” だった。
15. InBody / Nestle Enercal
- 展示: Body Composition Test & Nutrition Milk
- 解析: 計測(InBody)→診断→処方(Nestleミルク)の鉄板フロー。データを突きつけられた後の「不安」に対し、即座に「解決策」を売る。

Nestlé Enercal Wellness Booth(ネスレ・エナカル)では、InBodyによる無料の体組成測定と、栄養士によるヘルスアドバイスが受けられる体験型展示が行われていました。測定は数分で完了し、自分の“筋肉・脂肪バランス”がその場で分かるため、来場者の関心が非常に高いブースでした。
また、ネスレの高齢者向け栄養飲料「Enercal(エナカル)」も紹介され、シニアの筋力維持や栄養補助として注目されていました。健康分野のトレンドである「測定 × 栄養 × 生活改善」をコンパクトに体験できる、分かりやすく魅力的なブース構成でした。
16. KL Wellness City
- 展示: Healthcare Real Estate Project
- 解析: 病院を中心とした巨大なウェルネス・タウン開発。医療ツーリズムを見据えた国家プロジェクト級の「住」の提案。

医療の未来を都市ごと作る ― KL Wellness City の巨大プロジェクト
製品展示が並ぶ MIBS の中で、異様な存在感を放っていたのが
KL Wellness City のブース。
ここは単なる病院でも、単なる不動産でもない。
医療・健康・長期滞在・投資・観光のすべてを統合した、
“医療都市そのものを開発する” というスケールの大きなプロジェクトだ。
特に注目したのは、
医師自身が企画に深く関わっているという点。
「DOCTORS FOR DOCTORS」という言葉通り、
医療従事者が本当に必要とする施設・空間・ワークスタイルを
都市レベルで最適化するという思想がある。
2025年に開業する “THE NOBEL Healthcare Park” では、
医療観光客の長期滞在を想定したレジデンスも販売されており、
ヘルスケアと不動産投資が交わる新しい市場を肌で感じる展示だった。
17. Kissy / Ruwen
第2部:【Tech & Industry】「未来」ではなく「道具」を売る
日本の展示会にある「コンセプトモデル」はここにはない。「明日から使える実弾」だけがある。
18. Aerovation (Sunway Group)

- 製品: Intelligent Agriculture Drone J100
J100 は、パームやドリアンなどの“高木作物”に最適化された農業用スプレードローンで、プロペラのダウンウォッシュを活かした葉裏浸透散布、難地形へのオートパイロット適応、100% の散布カバレッジなどを特徴とする。マレーシアの農業が抱える労働力不足や灌漑困難地での管理効率化に最もフィットする機体であり、果樹園やパーム農園の省力化を大きく加速させる。一方で大型機ゆえ運用・整備コストは一定規模となるため、作付面積の大きい農家・事業者に向いたモデルといえる。
- 解析: マレーシア財閥Sunwayとの提携。プランテーション農業の人手不足を埋める「空飛ぶトラクター」。撮影用ではなく、農薬散布・播種を行う産業機械として実装されている。
19. Unitree (杭州宇樹科技)
- 製品: Quadruped Robot (ロボット犬)
- 解析: 雑貨の隣で無造作に売られる最先端ロボット。「300」といった手書きの値札(詳細不明だが安価であることを示唆)。日本がロボットに愛称をつけて可愛がっている間に、彼らはそれを「現場の巡回ツール」としてコモディティ化している。
20. Hangzhou Teliwei Trading
- 製品: E-Bike, Fat Bike, Scooter
- 解析: 渋滞社会の「足」。タイヤの太いFat Bikeなど、悪路や荷物積載に耐えうるタフな仕様が中心。Grabデリバリーなどの実需に応える。

産業用プラスチック容器の大手メーカーが出展していたブース。
会場では、食品・化学・塗料メーカーなどで使われる 業務用バケツや密閉容器、パッケージ用プラスチック容器 がずらりと並んでいました。
同社は全自動の射出成形ラインや検査装置を備えた工場を持ち、大量生産と安定した品質管理 が強み。OEMにも対応しており、製品設計から金型、製造、印刷、出荷まで ワンストップで対応できる総合パッケージメーカー という印象です。
展示品を見るだけでも、生産キャパシティの大きさと、海外企業との取引前提での品質意識の高さが伝わるブースでした。
21. FCE Apparel (ブランド名:Okurma)
- 製品: Industrial Portable Air Cooler
- 解析: 巨大な冷風機。常夏の工場における「暑さ」は生産性の敵。これを解決するためのB2B設備投資需要は無限にある。

OKURMA の Super Industrial Ceiling Fan は、東南アジアの工場やレストラン、ホーカーセンターのような大空間で特に効果を発揮する HVLS(High Volume Low Speed)型の大型天井ファンである。低回転で大量の空気を動かし、熱気の滞留を解消しながら空間全体の空気循環を最適化できる点が最大の特徴だ。エアクーラーやミスト冷却と併用することで、エアコンよりも低コストで高い快適性を実現できるため、東南アジアの高温多湿環境では不可欠な設備となりつつある。一方で設置には天井強度やスペースなどの制約があり、仕様選定には現場条件の確認が必要である。
22. Teioe Electric Appliance Technology
- 製品: USB Mini Fan, Folding Fan
- 解析: パーソナルクーラーとしてのハンディファン。デザイン性が高く、若者にとってはファッションアイテムの一部。

Disney 認証モデルも展示されており、
大手ブランドも採用する品質基準に対応した“量産力の高いOEM企業”として存在感を放っていました。
ブースは製品カテゴリごとに美しく整理されており、
カラーバリエーションや用途別ファンのラインナップは、東南アジア向け小型家電市場のトレンドを象徴する展示内容。
Zhejiang Pavilion の一角として参加しており、政府支援の輸出メーカーらしい安定感も感じられました。
23. Waxco Manufacturing
- 製品: Auto Care (Car Shampoo, Polish)
- 解析: モータリゼーションが進むマレーシアのカーケア市場。「Feel The Difference」を掲げ、愛車を輝かせたい層にアピール。
24. Merc Greenfield Sdn Bhd (HyGrow)
- 製品: Kenaf Industry, Water Smart Farming
- 解析: yGrow は、植物由来のバイオポリマーを使った次世代型の水分保持材で、灌漑コスト削減や土壌改善を同時に実現するアグリテック製品だ。一般的な石油系 SAP と異なり生分解性が高く、環境負荷が低いため、ESG 視点でも評価されつつある。一方で、効果は土壌条件に依存し、耐用年数にも限界があるため、現場では最適量と導入条件の検証が不可欠となる。水不足が常態化するアジア・乾燥地域の農業、造園、再緑化プロジェクトで特に導入価値が高い。

25. Homesafe (Jia An Group)
- 製品: Digital Safes
- 解析: 現金や貴金属を保管する金庫。治安や商習慣に基づいたリアルな需要。

HOMESAFE 家安集团 は、伝統中医学(TCM)をベースにした健康維持・体調管理ソリューションを提供する中国のヘルスケア企業。今回のMIBS2025でも特に来場者が多く、実演や無料カウンセリングで賑わっていたブースのひとつです。
展示の中心は、
- 伝統中医学×現代技術 による健康管理製品
- 免疫ケア・男性健康サポート・美肌ケア などのサプリメント
- 自宅で使える 家庭用ウェルネスデバイス
でした。
壁面のパネルには、
「体質に合わせた中医学的アプローチ」
「自然由来成分の処方」
「日常生活の中で取り入れられる予防養生」
といったコンセプトが丁寧に説明されており、特に40〜60代の来場者が多く相談している様子が印象的です。
健康チェックを受けながら、その場で最適な製品を提案してくれる“リアル相談”スタイルは、東南アジア市場での強さを感じさせます。
中医学由来の機能性商品に興味がある人、生活レベルで健康管理をしたい層、アンチエイジングや体質改善に関心のある層と非常に相性の良いブランド だと感じました。
26. Zhejiang Baizan Import and Export
- 製品: Safes (金庫)
- 解析: Homesafeと同様、セキュリティ需要に応える。浙江省からの輸出商材としての金庫。
27. Choo Kim Soon Plastic Manufacturing
- 製品: Plastic Hangers, Household items
- 解析: 「メーカー直販」を強調。生活必需品であるプラスチック製品を、中間マージンなしで安く大量に供給する薄利多売モデル。

CHOO KIM SOON PLASTIC MANUFACTURING SDN BHD は、マレーシア国内でも長年文具を製造してきた老舗メーカーで、今回のMIBS 2025 でも存在感のあるブースを展開していました。
自社工場での製造にこだわった ボールペン、蛍光ペン、替芯、修正テープ、クリップ、文具セット などの幅広いラインナップが並び、来場者が自由に手に取れる “Free Sample(無料サンプル)” が非常に人気を集めていました。
壁面には主要商品のポスターが並び、カラーバリエーションや書き心地をわかりやすく訴求。特に、書き味にこだわったゲルインクペンや、コストパフォーマンスの高いスクールセットが来場者から好評で、B2B商談を意識した実用的な展示構成でした。
また、OEM(自社ブランド製造)にも対応しているようで、企業や学校向けに大量発注できる体制が整っている点も強みとしてアピールされています。文具ジャンルは常に安定した需要があるため、バイヤー視点でもチェックしておきたいブースのひとつです。
28. Wenzhou Fly Craft Product
- 製品: Custom Printed Uniforms
- 解析: 選挙やイベント用のTシャツ・ユニフォーム。オンデマンド印刷技術により、小ロット多品種に対応。「熱狂の現場」に着る服を作るビジネス。
29. Yiwu Honghuang Imp & Exp
- 製品: Work Gloves (軍手・作業用手袋)
- 解析: 壁一面に並べられた作業用手袋。建設ラッシュや農業現場を支える、最も地味で最も必要な消耗品。
30. Zhejiang Taierge Mobile Lighting
- 製品: Flashlights, Headlamps
- 解析: 懐中電灯や作業灯。インフラが不安定な地域や、夜間作業現場での必需品。
第3部:【Food & Identity】「味覚」と「本能」を刺激する
「安心安全」を謳うだけの日本の食品とは違う。「欲望」と「見栄」と「味」を刺激するアジアの食品戦略。
31. Apache White Coffee
- 製品: Musang King Durian White Coffee
- 解析: マレーシア最強のIP「猫山王ドリアン」と「ホワイトコーヒー」を合体。金色のド派手なパッケージは、中華圏への土産需要を一点突破で狙っている。
32. Sin Sing Coffee (ブランド名:Meet U)
- 製品: Traditional Black & White Coffee
- 解析: 1959年創業の老舗。試飲カウンターの回転率が高く、地元民の日常消費をガッチリ掴んでいる。「Meet U」という親しみやすいブランド名。
33. Ma Ma Liang Egg (Guangxi Rural Investment)
- 製品: High-End Egg, Rock Sugar Orange
- 解析: 「世界長寿郷・麻陽」というテロワール(土地の物語)を付加価値に。単なる農産物を、長寿という人間の根源的欲求にリンクさせてブランド化。

長寿地域が生む “氷糖橙(Rock Sugar Orange)” の世界観
湖南省・麻陽エリアは、中国政府が認定する「世界長寿地域」。
その土地の自然環境と農法を活かした高級農産ブランドが、このブースに集結していました。
特に目を引いたのは、氷糖橙(Rock Sugar Orange)シリーズ。
ブランドごとに味と甘さが微妙に異なり、どれも“自然なのに驚くほど甘い”というのが特徴です。
現地ではギフト市場でも非常に人気が高く、富裕層向けフルーツの定番だそうです。
さらに、Ma Ma Liang Eggという放し飼い卵や、地域の特産野菜・ハーブ類も展示されており、
“美しく健康に長生きする土地の恵みを丸ごと輸出する” という世界観が一貫していました。
中国国内市場向けだけでなく、今後マレーシア・ASEAN への輸出も強化していく方針とのこと。
展示会ならではの 地域ブランド×輸出商談 の雰囲気が感じられるブースでした。
34. Swiftlet City (東馬京燕)
- 製品: Bird’s Nest (燕の巣)
燕の巣ブースでは、正規輸出ライセンスの表示と共に、加工前の原体が山積みで展示されていた。燕の巣は中華圏富裕層にとって「食べる宝石」と称される最高級食材であり、原体を直接見せる行為は、品質・真贋性・供給力をアピールする最も効果的な手法である。中国向け輸出には厳格な登録制度が存在するため、ライセンス保持は“信頼できる本物のサプライヤー”である証明となる。繊維密度や白度といったグレード基準を可視化し、無漂白・手作業精製の工程を強調することで、偽物・漂白問題が多い燕の巣市場において差別化を図っていた。
- 解析: 正規輸出ライセンスを掲げ、山積みの燕の巣を展示。中華圏の富裕層にとって、燕の巣は「食べる宝石」。加工前の原体を見せることで本物感を強調。


35. GPR GOLD
- 製品: Premium Cookies
- 解析: クッキー缶で築かれた巨大な城。贈答シーズン(ハリラヤ・旧正月)における「見栄え(ボリュームと豪華さ)」がいかに重要かを物語るディスプレイ。

- 乾物を宝飾品のように見せる、中国式プレミアムギフトブランド
- 展示会の中でも圧倒的な存在感を放っていたのが、
- 金色のアーチとLED装飾で彩られた GPR GOLD のブース。
- まるで宝飾ブランドの店舗のような佇まいだが、
- 棚に並ぶのはアワビ、ナマコ、干し貝柱など、
- 中国で縁起物として重宝される高級食材の数々だ。
- 中国・香港の贈答文化では、
- 乾燥アワビや干しナマコは“富と健康の象徴”として扱われ、
- パッケージの豪華さがそのまま価値を決める。
- GPR GOLD はこの文化を最大限に体現し、
- 乾物を宝石のように並べて見せることで、
- “乾物=高級ギフト”という中国的プレミアム市場の世界観 を鮮烈に打ち出していた。
- 商品の構成は、原体の高級乾物からギフトセットまで非常に幅広く、
- 海外輸出や企業贈答市場を強く意識したラインアップ。
- 食品という枠を超えた“ラグジュアリーブランド的”な展示で、
- 会場でもひときわ注目を集めていた。
36. CVT (China-Vietnam-Thailand) International Foods
- 製品: Dried Fruits, Crab Sticks, Snacks
- 解析: 3カ国をまたぐ食品商社。各国の「美味しいもの」を目利きし、国境を超えて流通させるプラットフォーム。

CVT は、加工食品の大量生産と輸出オペレーションに強みを持つ企業で、
“寿司素材”“屋台スナック”“芋スイーツ” といった 世界的に売れやすいカテゴリにしっかり寄せている。
展示構成は完全に 海外バイヤー向け(B2B 商談型)。
そのため製品の説明パネルよりも、目立つビジュアルと試食体験で一気に興味を引く方式を採用している。
37. Guangxi Green Food Association
- 製品: Jasmine Tea, Dried Persimmon, Rice
- 解析: 広西チワン族自治区の特産品。「桂字号」ブランド。地方自治体が主導し、地域産品をまとめて海外へ売り込むモデル。
38. Guilin Aiming Ecological Agriculture
- 製品: Canned Taro, Water Chestnut
- 解析: タロイモやクワイの缶詰。中華料理やデザートに不可欠な食材を、保存のきく形態で輸出。

中国・広西自治区の農村振興プロジェクトを背景に持つ農業系メーカーで、
伝統食材の加工品から茶飲料、里芋・蓮根・芋丸などの冷凍・缶詰食品まで多彩な商品を展開しているブランド。
ブースでは、桂林らしい深い琥珀色の茶をその場で淹れて提供しながら、ライブ配信(TikTok/抖音)と連動した“今売れている空気”を体感させる演出が印象的だった。

中国の農業系メーカーは近年、国策である「農村振興」とECを結びつけて急成長しており、このブースも リアル試飲 × ライブコマース × OEM商品の見せ場作り という最新の販促スタイルをそのまま持ち込んでいた。
特に茶の品質は高く、香り・甘み・飲み口の良さが際立ち、“展示会のおまけ”を超えた真剣なプロダクト。農業企業=原料売りというイメージを覆す、洗練されたブランド作りとSNS運用の巧みさが光っていた。

39. Anhui Jiuzhou Fangyuan Pharmaceutical
- 製品: Spices, Garlic, Chili (Uncle Chili)
- 解析: 「Uncle Chili」というキャラクターで展開するスパイス類。食欲を刺激する「辛さ」と「香り」の素。

Anhui Jiuzhou Fangyuan Pharmaceutical(安徽九州方圆製薬)は医薬品メーカーでありながら、
食品向けの 香辛料素材(ガーリックパウダー、チリパウダー、調味ベース) も手掛ける異色の企業。
展示されていた「Uncle Chili」シリーズは、
辛味と香りを主軸にした シーズニングブランド で、
キャラクター化された“可視化ブランド”によって、
大量生産系スパイスに差別化を与えるマーケティング設計になっている。
40. T.O.N (Tons Atelier)
- 製品: Handmade Soap
- 解析: ケーキのような見た目の石鹸。「Yummy Looking」を謳い、視覚的な可愛さでギフト需要を喚起。
t.o.n(tales of nature) — 天然素材を使ったクラフト系ハンドメイドブランド
このブースは、天然素材を使った手作り石鹸とバスギフトを中心に展開する
t.o.n(tales of nature) の出展。
花やスイーツを模した石鹸、アロマの香りが広がるバスバー、
リボン付きのギフトボックスなど、
“自然素材 × デザイン性” を両立したクラフトブランドらしいラインナップが並んでいた。

とくに目を引いたのは、
石鹸とは思えないほど精巧なフラワーデザインやマカロン型のアイテム。
色彩・質感・造形が非常に丁寧で、ライブ配信映えする“可愛いプロダクト” として
SNS対応力の高さを感じさせる。
実際、ブースでは TikTok/Facebook Live と連動した販売も行っており、
手作り商品のストーリーや香りをリアルタイムで伝える “ライブコマース型D2C” を強く意識した展示だった。
ギフト需要を狙うパッケージデザインも洗練されており、
ハンドメイド市場におけるブランド構築がしっかりしている印象。
クラフトの温かみと、SNS時代の発信力を併せ持つ、
いまどきのローカル・ハンドメイドブランドらしい存在感の強いブース だった。
第4部:【Culture & Branding】「Guochao(国潮)」の衝撃
中国企業は「安売り」をやめた。自国の文化を「クールな文脈」として輸出している。
41. Song Chao (宋朝香気)
- 製品: Chinese Fragrance & Lifestyle
- 解析: 会場で最も洗練されたブース。「宋」時代の美学を現代風に再構築。単なる芳香剤ではなく、「優雅なライフスタイル」という文脈(ナラティブ)を売っている。日本の「和」ブランディングを超える完成度。

中国伝統の香り文化を現代にアレンジしたフレグランスブランド
こちらのブースは、中国発のフレグランスブランド「宋朝香氛(Sòng Chao)」の展示。
中国伝統の「香文化」をモダンに再解釈したプロダクトが並び、香りの世界観を視覚的にも楽しめる構成になっていました。
ディフューザー、香りのギフトセット、ルームフレグランスなど、デザイン性の高いアイテムが中心で、淡いカラーリングのパッケージはお土産にも良さそう。
中国では若年層を中心に人気が高まっており、ライフスタイル系ブランドとして存在感を伸ばしています。
ブースの雰囲気も洗練されており、香りを試しながらブランド思想を理解できるつくりでした。
伝統文化 × モダンデザインの好例として興味深い展示でした。
42. Mingxin Tea Culture (茗心茶文化)
- 製品: Liu Bao Tea (六堡茶)
- 解析: 「国家級技能大師」による茶芸の実演。お茶を「飲料」から「芸術体験」へと昇華させ、その場で試飲させることで高単価販売を正当化。
43. Meixin International Commerce
- 製品: Organic Black Tea
- 解析: ピンク色のパッケージで統一された有機紅茶。伝統的なお茶のイメージを刷新し、女性層にアピール。
44. King Golden Plaque (LK Group / 正潮乙品)
- 製品: Golden Surnames Plaque (百家姓)
- 解析: 黄金の名字額装。華人社会の「メンツ(面子)」と「ルーツへの誇り」を刺激する究極の情緒的商品。機能性はゼロだが、社会的価値は最大。

LK GROUP TECH(King Golden Plaques)は、金属アートと文化の融合をテーマにした高級記念品メーカー。
百家姓プレートやオーダーメイドの金属額装など、職人技が光る立体作品を中心に展示していました。
特に、巨大な金文字プレートは圧巻で、式典用ギフト・ロビー装飾・文化アートとしての存在感が抜群。
東南アジアの華人文化圏で高い需要がある“縁起物 × 金属工芸”の領域で、強いブランド性を打ち出している企業です。
45. Uki Silver
- 製品: Silver Accessories
- 解析: 巨大なモデル写真を使い、アパレルショップのように展開。「中国製=ダサい」というイメージを払拭する、若者向けのブランディング。

UKI SILVER は、シルバーアクセサリーを中心としたファッションブランドの展示ブースです。
大型のビジュアルバナーを用いた強いブランド表現が特徴で、ミニマルで洗練されたデザインのアクセサリーを展示しています。
会場内では実際にアクセサリーの試着・販売・撮影などを行っており、若年層向けのトレンド感あるブランディングが際立っています。
出展ポイント
- シルバーアクセサリー(ピアス・リング・ネックレスなど)
- モード系・韓国系のビジュアルデザイン
- その場での装着・撮影体験あり
- クリエイティブなブース構成で、ファッション系の来場者を強く惹きつける演出
46. Yiwu Zhaoyang Accessories
- 製品: Beaded Straps, Pouches
- 解析: 義烏(イーウー)からの雑貨。「Retail(小売)」の手書き看板を掲げ、トレンド商品をその場で現金化しつつ、バイヤーも探す泥臭い商魂。
47. Hua Bin Lantern

- 製品: Chinese Lanterns
- 解析: 旧正月用の赤提灯。中華系コミュニティにとってのインフラ的商材。
中国・春節文化の象徴を極めた大型ランタンメーカー**
今回の展示でひときわ目を引いたのが、
HUA BIN LANTERN TECHNOLOGY(華斌灯籠科技)の大型ランタンブース。
通路から視界に入った瞬間に圧倒されるほど、
赤と金のコントラストが美しく、存在感の塊のような装飾が並んでいました。
特に印象的だったのは、
高さ2m前後の巨大ランタンから、多段構造で連結された“タワー型ランタン”まで、
商業施設・ホテルロビー・大型モールでのデコレーションを前提にしたプロ仕様の造り。
ランタンの表面には、
「福」「恭喜發財」「平安」などの縁起の良い文字が金糸で刺繍され、
春節や新店舗オープン、各種イベントの空間演出に最適な仕上がりです。
さらに、展示員によるとロゴ入り・特注サイズなどのカスタム制作も可能とのことで、
ホテル、ショッピングモール、テーマパークなどの空間演出企業にとって理想的なサプライヤーだと感じました。
B2B向けのプロダクトではあるものの、
ここまでデザイン性と物量を兼ね備えたランタンメーカーは珍しいため、
空間装飾業界やイベント制作会社には強く推したい企業です。
48. Wenzhou Fly Craft Product (再掲)
- 製品: Custom Uniforms
- 解析: 小ロット対応のオンデマンドプリント。イベントや選挙という「祭り」を支える裏方。
第5部:【Infrastructure】すべてを繋ぐ血管
会場の商流を裏で支えるのは、銀行ではなく「プラットフォーム」だ。
49. XTransfer

- 事業: B2B Cross-Border Payment
- 解析: 「Pay to China」を掲げる決済インフラ。中小企業が銀行を通さずに、スマホ一つで中国サプライヤーへ送金できる。このスピード感が、会場内のカオスな取引を可能にしている。
XTransfer は、中国取引に特化した世界有数のB2B越境決済プラットフォーム。
国際送金・多通貨管理・KYC/AML をワンストップで提供し、特に「中国企業への支払い」を高速・低コストで実現する点が強みです。
ブースでは、J.P.Morgan や HSBC など大手金融機関との提携を掲示し、信頼性を全面にアピール。
また「Pay to China」「Boost Your Growth in Malaysia」など実務的なコピーで、製造業者・越境EC・卸企業に向けて“面倒な国際決済の簡素化”を訴求していました。
マレーシア企業は中国サプライヤーとの取引が多く、実務の痛点を直撃するサービスモデルとして非常に分かりやすい展示構成でした。
50. Zhejiang Export Fair (浙江省輸出商品交易会)
- 機能: Sourcing Hub
- 解析: マレーシアを「ハブ」として、南アジア・中東へ商品を流し込むための巨大な水門。掲示されたカレンダーにはバングラデシュやネパールの名前も。ここに来ればアジア全域と繋がれる。

Zhejiang Emperor Practice Elite Enterprise Management Consulting Co., Ltd は、中国浙江省の企業経営者向けに、成長戦略・組織構築・リーダー育成を支援するコンサルティング会社です。代表者による成功哲学・経営メソッドを基盤に、講演会、研修、経営改善プログラムを提供しており、多くの中小企業の成長支援実績を持っています。
■ 総括と提言:脳内から脱出し、野性を取り戻せ
佐藤様、これがMIBS 2025の全貌です。 日本企業が陥っている「脳内マーケティング」と、アジアの現場にある「肉体リアリティ」。その差は歴然としています。
1. スペックを捨て、体感を売れ
成分表の0.1%の違いを競うな。DasLegaの生姜ショットのように、飲んだ瞬間に体が反応する**「圧倒的な体感」**を作れ。説明が必要な商品は、ここでは通用しない。
2. タレントに頼るな、社長が出ろ
綺麗なCMはいらない。Tuan Das Abdul氏のように、作り手自身が汗をかき、ライブ配信で熱狂を作れ。**「社長=最強のインフルエンサー」**であるべきだ。
3. 調整するな、投入せよ
完璧なデザインや物流網ができるのを待つな。Need Leeのように、手書きの研究パネルでもいいから、市場に飛び込んで反応を見ろ。日本企業に必要なのは、**「未完成のまま走る野性」**だ。
日本企業が再び世界で戦うためには、快適な「脳内空間」から抜け出し、この泥臭い「肉体リアリティ」の戦場へ帰還する必要があります。 マレーシアの熱気は、そのことを我々に教えてくれています。

