LIF-TEC編集部レポート:チェンマイSEOカンファレンス2025【CMSEO2025完全レポート】リンクを追うな、育てろ。アウトリーチ不要の「受動的リンク構築システム」戦略

セッションタイトル: Build PR Relationships That Actually Scale (While Everyone Else Spams) (他のみんながスパムを送る中、本当にスケールするPR関係を構築する方法)

登壇者: Christopher Panteli (Linkifi 共同創業者)


【序章】「HAROは死んだ」…AIスパムの死地から始まった「黄金時代」

「まず、昨年この時期に亡くなった『HARO(Help a Reporter Out)』のために、黙祷を捧げたい」

Christopher Panteli氏のセッションは、この衝撃的な言葉で始まりました。氏がバンコクのバーでビールを飲んでいた深夜に受け取った「(disengage our profits)」という、HAROのオーナー企業からのメール。それは、AIによる大量スパムでプラットフォームが制御不能になった結果でした。

しかし、氏はこれを「業界全体の広範な問題の象徴」と断言します。そして、HAROが「Connectively」として生まれ変わり、Source of Sources (SOS) やQuotedといった新サービスが台頭した今、「我々はデジタルPRリンクビルディングの黄金時代にいる」と力強く宣言しました。

ジャーナリストは、かつてないほど専門家の知見を引用したがっています。問題は、99%のスパムとAI生成のノイズの中から、いかにして「本物の価値」を届け、信頼関係を「スケール」させるかです。

本レポートは、Linkifi社が10,000件以上のTier1リンク(平均DR81)を獲得した実績に裏打ちされた、Panteli氏の戦略「リレーションシップ・フライホイール」の全貌を、プレゼンの流れに沿って詳細に解説します。


1. 【STEP 1】ピッチ以前の準備:成功の80%を決めるシステム構築

Panteli氏のメソッドで最も重要なのは、ピッチメールを送る前の「準備」です。これが成功の80%を占めます。

① 機会(オポチュニティ)の集約とシステム化

まず、あらゆるソース(HARO、Quoted、SOS、PressFlux、X、Threads、BlueSkyなど)からの記者リクエストを、n8nのようなワークフローツールで集約。AI分析でキーワードを抽出し、Airtableに流し込み、Slackで担当者(CEO、CFO、技術者など専門分野ごと)に通知するシステムを構築します。

② 機会の「徹底的な検証」

集めたリクエスト全てに価値があるわけではありません。

  • DRとトラフィック: Ahrefsで基本情報を確認します。
  • リンクポリシーの確認: 最も重要なのがこれ。「編集方針として絶対にリンクを貼らないメディア」や「リンクを貼っても編集段階で削除されるメディア」が存在します。これらにピッチするのは時間の無駄です。
  • 詐欺の排除: 「コメントは素晴らしかった。掲載料として300ドル必要だ」といった詐欺も存在します。

③ 「生きたブラックリスト」の運用

氏は、これらの「リンクをくれないメディア」「詐欺メディア」をまとめた**「生きた、呼吸するブラックリスト(a living, breathing blacklist)」**の運用を強く推奨しました。(会場では氏のリストのQRコードが共有されました)

重要なのは、これを「生きている」ものとして扱うこと。メディアのリンクポリシーは頻繁に変わるため、ブラックリスト入りしたメディアも定期的に**「再テスト」**する必要があります。(これはQ&Aでも強調されました)

④ エキスパート・ポジショニング

ピッチする「専門家」と、記者が求める「機会」が完璧に一致しているか。これが成功の80%を決めます。

記者はラジカルな新思想を求めているのではなく、**「その人の権威を記事に活用したい」**だけです。

  • NG例: スポーツ衣料Eコマースのオーナーが、健康法について語る。
  • OK例: スポーツ衣料Eコマースが、自社の「フィットネス・インストラクター」を専門家として立て、スポーツ関連の質問に答える。
  • 難易度の高い例(カジノ): カジノ自体でのピッチは難しくても、その企業に所属する「CFO」や「人事(HR)マネージャー」を立て、彼らの専門分野(財務や人事)でピッチする。

記者が1クリックで安心できる「証拠」を、複数のプラットフォームで揃える必要があります。

  1. Aboutページ: 専門家の経歴、資格、顔写真が明確にわかること。ナビゲーションの奥深くに隠さないこと。
  2. LinkedIn: 記者が必ずチェックするプラットフォーム。経歴と現在のビジネスが明記されていること。
  3. Google検索: 氏名で検索した際に、ディレクトリなどで顔写真とプロフィールが表示され、信頼できる状態になっていること。

これらをピッチテンプレートに集約し、記者が一瞬で信頼性を確認できるようにします。


2. 【STEP 2】ピッチの実践:AI時代を生き抜く「完璧なピッチ」

準備が完了したら、いよいよピッチです。

完璧なピッチの2大原則

  1. 権威を視覚的に示すこと(上記で準備した要素:ヘッドショット、経歴、過去の掲載実績をテンプレートに盛り込む)
  2. ジャーナリストが要求したことを「正確に」行うこと「ジャーナリストの最大の不満は何か? 『3つの箇条書きをくれ』と頼んだら、PDFのeBookが送られてくることだ。『1パラグラフくれ』と言ったら5,000語送られてくる。彼らが望むものを正確にやれ。さもなければ二度とあなたと仕事しない」

AIスパムを回避する「AI活用ワークフロー」

今や編集者もAI検出ツールを使っています。しかし、聖書ですらAI判定される(AIでは書かれていないのに)現状もあります。

Panteli氏が提示したのは、AIスパムのノイズを避けつつ、AIを活用する**「人間主導、AI強化(Human-led, AI-enhanced)」**アプローチです。

まず、ピッチするクエリを3種類に分類します。

  1. 事実ベース (Fact-based): AIを多用してもOK。
  2. 意見ベース (Opinionated): AIの使用は避けるべき。
  3. 個人的経験 (Personal experience): AIの使用は絶対に避けるべき。記者はすぐに見抜く。

AIを活用する場合の具体的なワークフローは以下の通りです。

  1. リサーチ (AI): GeminiやPerplexityを使い、関連情報を収集・分析する。
  2. 口述 (Human): Voice Inc. のようなディクテーション(音声入力)ツールを使い、自分の声で、自分の口調・リズム・言語的特徴(Linguistic flurry)でピッチ内容を吹き込む。テキストはめちゃくちゃでも構わない。
  3. 再フォーマット (AI): 2で作成した「魂の入ったテキストブロック」をChatGPTにかけ、以下の**「魔法のプロンプト」**で整形する。“Rewrite this copy, preserving the original linguistic tone, flurry, and structural flow. Tighten the formatting and wording where needed, but deviate only when necessary to improve the narrative logic.” (和訳:元の言語的なトーン、勢い、構造的な流れを保持したまま、このコピーを書き直してください。必要に応じてフォーマットや言葉遣いを引き締めてください。ただし、物語の論理性を改善するために必要な場合にのみ逸脱してください。)
  4. チェック (AI): AI検出ツールにかけ、AIスコアが低いことを確認する。
  5. 送信: ピッチテンプレートに組み込み送信する。

このワークフローにより、AIが生成する「ゲームチェンジャー」や「ワンサイズ・フィット・オール」といった決まり文句(emダッシュ記号なども)を避け、AI検出を99.9%回避できます。

さらに、カスタムGPTに自分の過去のポッドキャスト文字起こしやPDFを知識ベースとして読み込ませ、自社のブランドガイドラインや「禁止フレーズ」を指示に組み込むことで、特定のクライアントや個人の「声」としてピッチを生成させることも可能だとしました。

(補充)安全なメール配信の技術

ピッチがスパムとみなされないため、技術的なメール管理も不可欠です。

  • 基本設定: DKIM, DMARC, SPFを正しく設定し、定期的にチェックする。
  • ドメインの安全運用: メインのドメインを守るため、**セカンダリドメイン(リダイレクト設定)**を使用する。
  • ウォームアップ: True Inboxのようなウォームアップツールを使い、ドメインのレピュテーション(評価)を維持・テストする。
  • Outlook対策: 多くのジャーナリストが使用するOutlookには「セーフリンク」機能があり、リンクが奇妙なトラッキングURLに変換されます。これを避けるため、ハイパーリンクと「ネイキッドURL(http://…から始まる生のURL)」の両方を併記します。

3. 【STEP 3】ピッチ後の「本当の仕事」:価値を10倍にする関係構築

ピッチが成功し、記事に引用された。ここで満足してはいけません。「本当の仕事はここから始まる」とPanteli氏は言います。

① 最重要:「リンクなし言及」の回収(40%の勝利を上乗せ)

衝撃的なことに、Linkifi社のリンク獲得のうち**40%は「リンクなしの言及(Unlinked Mentions)」**を後からリンクに転換したものです。つまり、ピッチが採用されても、4割はリンクが貼られていないのです。

  • アグレッシブな追跡: Googleアラート、Talkwalker、そして24時間以内の「手動検索スイープ」で、あらゆる名前のバリエーション(”Joe Bloggs”, “Bloggs Law”, “BloggsLaw”など)を追跡します。
  • 24時間以内が勝負: 記事公開後24時間以内が、記者も最も反応しやすいためゴールデンタイムです。
  • 粘り強いフォローアップ: 既存のスレッドで丁寧にお願いし、返信がなければ3日おきにフォローアップします。GmailのSnooze機能が有効です。
  • 最大10回のタッチ: 驚くべきことに、勝利の25%は8回目のメール以降に発生します。丁寧さを保ちつつ、最大10回はプッシュします。(DR75のサイトで8回目のメールが成功した実例が示されました)

② アドバンス戦略:「コネクター」になる

一度関係ができたジャーナリストは、最大の資産です。

  • 再度のコンタクト: 「他に何か探していませんか?」とメールするだけで、30%が新しい機会を返してくれます。特に、多くのジャーナリストはフリーランスで、複数のTier1メディア(NYタイムズなど)に執筆しているため、この関係は非常に価値があります。
  • SNSの活用: ジャーナリストはSNS(特にX)で非常にアクティブです。Journofinderのようなツールでリクエストを監視し、直接コンタクトを取ります。
  • ネットワークへのパス: 記者から来たリクエストが自社に合わなくても、ネットワーク内の他の専門家(友人)にパスします。これにより、記者は新たなソースを得て喜び、あなたは価値ある**「コネクター」**としての信頼を得ます。

③ 「超ローカル」な速報価値の提供

Panteli氏が「非常に強力だ」と強調した戦略です。

  • 例: あなたが米国の特定地域の不動産クライアントを持っているとする。
  • その朝、その地域に特化した新しい不動産規制のニュースが流れた。
  • 即座に、その地域で活動する専門家(クライアント)の「見解(Point of View)」コメントを作成し、地元のジャーナリストやラジオ局に提供する。
  • これはジャーナリストにとって「最高の価値」であり、ほぼ確実にピックアップされ、強力な関係性が築かれます。

4. 【結論】「リンクジュース」から「権威ジュース」へ

BuzzStreamの調査でも示されたように、AIスパムの氾濫により、ジャーナリストは「スプレー&プレイ(数打てば当たる)」のアプローチにうんざりしています。

Panteli氏は、「これからのデジタルPRの成功は、リレーションシップ(関係性)にすべてがかかっている」と結論付けました。SEOの目的も変わりました。

「これはもはやリンクジュース(Link Juice)ではない。**オーソリティ・ジュース(Authority Juice)**だ」

プレス(メディア)を活用してブランドと個人の「権威」を構築することこそが、真の目的なのです。


5. 【完全網羅】Q&Aセッション:会場からの鋭い質問

Q. ジャーナリストに覚えてもらい、アウトリーチなしでリンクしてもらうには?

A. 「価値」を提供し続けること。 特に、速報ニュースに対して即座に価値あるコメントを提供し続けることで、「信頼できる情報源」として記憶されます。

Q. 最高の記者リクエストツールは?

A. JournoFinderも良いが、個人的には**「自作する」**のがベスト。n8nのようなシンプルなワークフローで、自分(またはクライアント)のニーズに合わせてカスタマイズするのが一番効率的だ。

Q. ブランド言及(リンクなし)は、従来のバックリンクと同じくらい効果があるか?

A. 「YES」。 そして、「(もし費用が発生するなら)リンクと同じ金額を払うべきだ」。LLMの可視性(AIの学習ソース)という点でも、ブランド言及は非常に価値が高い。デジタルPRはSEOとLLMの両方に効く一石二鳥の戦略だ。

Q. Tier1メディアに刺さるかどうかの「事前のシグナル」はあるか?

A. 「ない」。 残念ながら。ニュースサイクルは変わり、競争も激しい。成功を保証するものは何もない。できるのは、多くのアイデアと角度を持ち、ターゲットを絞り、最高のストーリーを作って、成功の「確率」を最大化することだけだ。「フリーランチ(タダ飯)はない」。

Q. iGaming(カジノなど)のような規制の厳しい市場での戦略は?

A. 「徹底的に合法的であれ」。 ビジネスを合法的に見せ、隠さないこと。Aboutページを充実させ、LinkedInプロフィールを公開する。そして、iGamingの専門家としてピッチするのではなく、その企業に所属する**「本物のCFO」や「人事(HR)マネージャー」**を専門家として立て、彼らの専門分野(財務や人事)でピッチする。リンクをiGamingサイトに貼るのは難しいが、不可能ではない。

Q. ジャーナリストとの関係が「温まっている」シグナルは? A.

「電話(Google Meet)に乗ること」。 これをやる人は少ないが、ジャーナリストは電話を好む。SEO担当者は電話が嫌いかもしれないが、一度顔を見せて話せば、関係構築のペースは10倍になる。

Q. リンクを貼らないメディア(ブラックリスト)はどう扱う?

A. 基本は避ける。だが、**定期的に「再テスト」**する。USA TodayやUS Newsも長年リンクしなかったが、ある日突然ポリシーが変わり、リンクし始めた。だから我々は毎月再テストしている。

Q. PRとしてピッチするのと、本人としてピッチするのはどちらが良い? A. 両方テストしたが、どちらかが優れているという明確なデータはない。ケースバイケースだ。ジャーナリストによっては本人からのピッチを好み、他のジャーナリストはPR担当者とのやり取りに慣れている。

Q. このプロセスを管理するカスタムソフトは?

A. Airtableと、エージェンシーの複数人管理のためにカスタムビルドしたシステムを使っている。しかし、必須ではない。

Q. リンクの質は何で見る?(リファラルトラフィック、関連性など)

A. 我々は「世間一般に知られる名前(Household name publications)」を狙う。これらは通常、巨大なサイトだ。リファラルトラフィックはKPIではなく、「追加のボーナス」だ。重要なのは、**「リンクのアルゴリズム的な価値」「ブランド言及」**そのものだ。

Q. ゼロから始めたら、いつ結果が出る?

A. 時間はかかる。 拒否される(というか、ただ返信が来ない)ことに打ちのめされるな。最初は「暗闇に向かってピッチしている」ように感じるだろう。だが、最大の価値を提供し続けていれば、必ずジャーナリストが拾ってくれる。コースから外れずに、やり続けることだ。

🗣️LIFTEC編集部コメント:

「日本市場には、まだ“関係性SEO”の余地がある」

今回のPanteli氏の講演で最も印象的だったのは、「リンクジュースから権威ジュースへ」という発想の転換です。
単なる被リンク獲得ではなく、“信頼される専門家ネットワーク”そのものを資産化していく考え方は、まさにEEAT(Experience, Expertise, Authoritativeness, Trustworthiness)の実践形だといえます。

日本国内でも「専門家コメントを寄稿する」形式の記事やリリースは増えつつありますが、多くは購入済みの専門家リストを使ったり、単発寄稿にとどまるケースが大半です。
一方Panteli氏のアプローチは、

  • ジャーナリスト側と「相互に継続的に価値を提供し合う」こと
  • 企業・個人の双方が“語る専門家”としてブランドを構築していくこと
  • そしてAI時代にこそ「人間的関係性」をスケールさせること
    を軸にしています。

これは、SEO施策としてもPR施策としても、極めて再現性が高いモデルです。
とくに、日本ではまだ**「記者リクエストを自動収集・分析してピッチを最適化する」**仕組みが一般化していないため、この分野には新たな事業機会が眠っています。

企業の「専門家ページ」や「メディア露出履歴」を整備し、SlackやAirtableで社内の知見を可視化・共有することができれば、EEAT強化と同時にデジタルPRリンクビルディングの最前線に立つことができるでしょう。

AIスパムが蔓延する時代だからこそ、“本物の関係性”をスケールさせる技術と思想が問われています。
LIFTEC編集部としても、今後この分野(PR×SEO×AIオートメーション)の国内展開を注視していきたいと思います。


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