年商数億円の壁を破る
「8桁ビジネスの設計図」——
Dayu Yang(EcommOps)全解説
Wharton MBA・BCG出身のDayu Yang氏が公開した「7桁ファネルが死ぬ理由」「アングル移植戦略」「Off-funnel信頼インフラ」「物流×機会損失」「LTV錬金術」の全構造。テクニック論ではなく、経営の設計図だ。
バンコクの熱気は、会場の温度だけではない。ここ「Affiliate World Asia(AWA)」には、世界中から”本物のプレイヤー”が集結している。
今回最も衝撃を受け、日本のD2C・通販業界に持ち帰らねばならないと確信したセッションがある。Dayu Yang氏(EcommOps CEO)による「Turning a 7 figure skincare funnel into a scalable 8+ figure business」だ。

彼は単なるマーケターではない。Wharton(ウォートン・スクール)でMBAを取得し、BCGで戦略コンサルタントを務めた「ビジネス構築のプロ」だ。現在はEcommOpsのCEOとして、中国・深センを拠点にビジネスを動かしている。
累計GMV
累計出荷数
出荷対応国
深セン→世界出荷
フルレンジLTV

第1章:Structure——「7桁の成功」が「8桁の地獄」を招く理由

年商数億円モデル——「脆い構造」
- Supply:1社のドロップシッピング業者(OEM先)
- Platform:シンプルなShopify(LP特化型)
- Team:創業者+少数のVA(バーチャルアシスタント)
- 広告クリエイティブがコピーされた瞬間に崩壊
- アルゴリズム変更で一夜にして消滅するリスク
- 「資産(Asset)」がなくフロー依存のみ
年商数十億円モデル——「参入障壁の構造」
- 複数の生産拠点(Multiple Factories)
- 複数の物流拠点(Multiple 3PLs)——各国に現地倉庫
- ブランドとして機能するフル装備のStorefront
- Amazon・TikTok Shop等の多チャネル展開
- この複雑性こそが最大の参入障壁(Moat)
- 競合が「面倒くさい」と諦める壁を自ら作る


“A 7-figure funnel doesn’t require much to operate. A sustainable 8+ figure business requires much more.”
— Dayu Yang / EcommOps CEO
第2章:Angle Strategy——「翻訳」はするな。「コンプレックス」を移植せよ
彼らが扱った商材は、タイのインフルエンサー「Pasnita」が開発したターメリック(ウコン)配合のボディスクラブだ。タイ国内では「Whitening(美白)」を訴求軸として爆発的に売れていた。

しかし、これをアメリカ市場に持ち込む際、「Whitening(美白)」は機能しないどころか人種的センシティビティに触れるリスクがある。多くの白人層はむしろ「ヘルシーな日焼け肌」を好む。
| マーケット | ターゲット | 悩み | ゴール | 訴求Angle |
|---|---|---|---|---|
| タイ国内 | 中年のタイ人女性 | 地黒・日焼け | 白くなりたい | Whitening(美白) |
| アメリカ | 高齢のアメリカ人女性(Boomers) | 加齢によるシミ・色ムラ・傷跡 | 均一な肌色 | Dark Spots / Even Skin Tone |


“Don’t just consider demographics. What do these two types of customers have in common?”
— Dayu Yang
【LIF Tech 佐藤の深読み】 日本企業が海外進出する際に最も失敗するのが「直訳」だ。「White」を「シミのない若々しい肌」と訳すのがマーケターの仕事であり、「White」を「白」と訳すのは翻訳家の仕事だ。日本国内でも応用できる。若者向けの「ニキビケア」を、中高年向けの「マスク荒れ対策」として売るような「文脈の転換」こそが、新たな市場を切り拓く。
第3章:Trust & Off-Funnel——「疑い深い探偵」を味方につけるWeb構築
日本の単品通販では「広告→記事LP→購入完了」という「一本道ファネル」が王道とされている。彼らも最初はそうだった。

ファネル進化の3段階
| フェーズ | 構造 | AOV | 限界 |
|---|---|---|---|
| 初期 | FB広告(VSL)→ シンプルな決済ページ | $60 | これ以上の伸びしろがない |
| 最適化後 | VSL → 記事LP → ストーリーのある販売ページ → アップセル + 購入後アップセル | $80(+購入後$15) | 「離脱ユーザー」を捨てていた |
| Off-funnel整備後 | 上記+信頼インフラ(公式サイト・Amazon・SNS) | 全体CPA低下 | 広告外流入を受け止め、CPAを構造的に改善 |
ユーザーの「検索行動」をハックする
ユーザーは広告を見た瞬間には買わない。一度離脱し、GoogleやYouTubeで「裏取り」調査を行う。
pasnita body scrub reviews(レビューを調べる)pasnita scam(詐欺じゃないか確認する)does pasnita work(本当に効くのか調べる)pasnita where to buy(どこで買えるか探す)

初期のPasnitaには、この「受け皿」がなかった。検索しても出てくるのは広告用LPだけ。公式サイトもAmazonもない。ユーザーは「怪しい詐欺サイトかもしれない」と判断し、購入を断念する。
「信頼のインフラ」構築——3つの柱
- Optimized Storefront(重厚な公式サイト):創業者のストーリー・成分の科学的根拠・FAQを充実させた、ブランドとして機能するShopifyサイト
- Omni-Channel Strategy(多チャネル展開):Amazon・TikTok Shopにも出店し「どこでも買えるまともなブランド」という認知を形成
- Social Proof(社会的証明):「最初は疑っていたけど(Skeptical)、使ってみたら手のシミが消えた!」——「Skeptical」というワードを意図的に入れることで、同様に疑うユーザーの共感を呼ぶ


第4章:Logistics & Opportunity Cost——在庫切れは「死」である
Dayu氏が最も熱を込めて語ったのが、「物流はマーケティング戦略の一部だ」という点だ。
| フェーズ | 物流戦略 | 狙い |
|---|---|---|
| 立ち上げ期(Launch) | 中国からの直送でスタート | 在庫リスクゼロでPMFをテスト |
| 拡大期(Scaling) | PMF確認国に現地倉庫(3PL)を導入 | 配送時間の短縮→CVR改善 |
| 緊急時バックアップ | 現地倉庫が空でも中国発送へ即切り替え | 機会損失を構造的に防ぐ |


第5章:The Grind & Seasonality——1つの「当たり」の裏にある数百回の「ハズレ」
成功の裏にある「死体の山」
セッションで最もリアルだったのが、Excelのスクリーンショットだ。ROAS 0.78、0.77、0.76——赤字のオンパレード。
“But it was not easy… there were 5-10x of these.”
— Dayu Yang(1つの成功の裏に5〜10倍の失敗があった)
彼らは数百通りのバリエーション(クリエイティブ×コピー×ターゲット)をテストした。その大半は失敗だ。しかしその中から見つけた「勝ち筋」だけをスケールさせた。
「季節」と戦うな、波に乗れ
| 季節 | CPA | 最適な戦略 |
|---|---|---|
| Spring / Summer(春夏) | $70〜$75(安い) | 新規獲得(Acquisition)に全力投資。肌露出が増え、ボディケアへの関心が高まる |
| Autumn / Winter(秋冬) | $100超(高い) | 無理に追わずLTV向上・ギフト需要にシフト。保湿クリームを前面に出す |

第6章:Future & LTV——製品ロードマップとLTVの錬金術
新SKU追加でAOV+$10を実現
彼らはボディスクラブとセットで使う「Body Cream」を開発した。「角質を落とす(スクラブ)→保湿する(クリーム)」というスキンケアのRitual(儀式)として提案することで、新SKU追加によりAOVが平均$10向上した。
- Repair(修復):ボディスクラブ(起点)
- Body(体):Body Cream(保湿)追加→AOV向上+冬の売上平準化
- Face(顔):フェイシャルケアへの拡張
- Hydration(保湿):全身保湿ラインの完成→フルレンジLTV $687を実現

LTVこそが勝負の分かれ目
| 指標 | 数値 | 意味するもの |
|---|---|---|
| CPA | $64 | 新規顧客を獲得するコスト |
| AOV | $84 | 1注文あたりの平均単価 |
| ROAS(初回) | 1.3 | アフィリエイターなら撤退する数字——しかし彼らには勝算がある |
| Avg LTV(スキンケア単品) | $176 | 初回でトントンでも、ここで回収できる |
| Avg LTV(フルレンジ) | $687 | 競合より高くCPAを入札して市場を制圧できる根拠 |
“LTV is where it really matters.”
— Dayu Yang
ROAS 1.3でも戦える理由:初回購入でトントンでも、その後のLTVで$600以上を回収できるから、CPAが高騰しても競合より高く入札でき、市場を制圧できる。LTVを持つブランドと、持たない単品通販の「入札力」の差はここで生まれる。
結論:LIF Tech 佐藤からの「ネクスト・アクション」
Dayu Yang氏のセッションは、即効性のあるテクニック論ではなかった。ビジネスを「資産」として積み上げるための、本質的な講義だ。
Launch(立ち上げ)
- PMFの検証が最優先
- 投資は最小限
- 物流は中国直送(Dropshipping)
- 1アングル×シンプルLP
Traction(検証)
- 財務とオペレーションの検証
- 投資6桁ドル(数千万円)規模
- 物流はハイブリッド(一部現地倉庫)
- Off-funnel信頼インフラの整備
Scaling(拡大)
- 確信を持った拡大・利益の再投資
- 完全な現地倉庫網+複数工場
- 製品ラインの横展開でLTV最大化
- LTVを武器に高CPAでも入札して市場制圧
“7桁の売上は『勢い』で作れるが、8桁のビジネスは『仕組み』で作る。”
— Dayu Yang / AWA バンコク 2025
この言葉を胸に、世界基準のマーケティング・オペレーションを構築していこう。以上、バンコクAWA会場より、LIF Tech 佐藤がお届けした。
LIF Techではこの領域の実務事例を今後も発信していきます。

