「FinTechからAI Finへ」―― GFTN CEOソプネンデュ・モハンティが語る、2026年グローバル金融の3大潮流と”日本の使命”

目次

―― デジタル通貨カンファレンス 2026|Japan Fintech Week オープニングセッション全記録

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序章:「世界は、日本を見ている」

2026年2月24日、東京。

Japan Fintech Week 2026の開幕を告げる「デジタル通貨カンファレンス 2026 — FUTURE OF DIGITAL MONEY」のステージに、二人の登壇者が姿を現しました。

一人は、Global Finance & Technology Network(GFTN)のCEOであり、かつてシンガポール金融管理局(MAS)初のChief FinTech Officerとして世界のFinTech規制の礎を築いた**ソプネンデュ・モハンティ(Sopnendu Mohanty)**氏。もう一人は、デジタルアセット専門メディア「NADA NEWS」を運営するN.Avenue株式会社の代表取締役CEO、**神本侑季(Kamimoto Yuki)**氏。

オンラインを含め1,000名以上が登録したこのカンファレンスのオープニングセッションで、モハンティ氏は開口一番、会場にこう語りかけました。

「日本にはいつも個人的な思い入れがあります。キャリアの大部分を日本で過ごしてきましたから。10年前にChief FinTech Officerに就任したとき、いつか日本のエコシステムの一部になりたいと思っていました。日本には成長する巨大なチャンスがある。日本は常に世界をリードする金融センターでしたから」

その言葉の裏には、単なる社交辞令ではない確信がありました。セッションが進むにつれ、それは明確なメッセージへと結晶していきます。


第1章:3つのメガトレンド ―― FinTechからAI Finへの「地殻変動」

神本氏の最初の問いはシンプルでした。「2026年現在、グローバルFinTechの主要トレンドは何ですか?」

モハンティ氏は、直前にインドで開催された「Great India AI Summit」から戻ったばかりだと切り出し、自身の肌感覚と投資データを交えながら、3つのメガトレンドを提示しました。

トレンド1:FinTechから「AI Fin」への転換

「インドでは、あらゆるAIリーダーが集結していました。そこで私が強く感じたのは、グローバル規模で起きている”FinTechからAI Finへの急速なシフト”です」

モハンティ氏によれば、10年前の金融セクターはレガシー技術の塊でした。そこにFinTechが登場し、テクノロジー、金融モデル、ビジネスモデルの大転換が起きた。そして今、その基盤の上に「AI」が新たな地殻変動を引き起こしているといいます。

「2025年の投資データを見てください。セクター全体で1,200億ドル以上が投資されましたが、そのうち約20%はAI関連企業への投資です。さらに広く見れば、80%の企業が何らかの形でAIを活用して資金調達を行っています。AIは基盤的なシフトになったのです」

投資の世界でも、採用の世界でも、次世代FinTechの定義そのものが「AI Fin」へと塗り替えられつつある。これが第一のトレンドです。

トレンド2:組み込み型金融(Embedded Finance)の本格化

「2つ目のトレンドは、FinTech業界が何年もかけて実現しようとし、なかなかうまくいかなかったもの ―― 組み込み型金融(Embedded Finance)です」

テクノロジーを使って、金融を実体経済のセクターに組み込む。旅行業界やサプライチェーンの裏側に金融機能がシームレスに統合される。この動きが2025年から2026年にかけて急加速し、800億〜1,000億ドル規模の成長を記録しているとモハンティ氏は指摘しました。

トレンド3:「お金の定義」の変容 ―― デジタル通貨・ステーブルコイン・トークン化

「そして3つ目。これこそが、今日このカンファレンスが存在する理由です」

モハンティ氏は、NADA NEWSのタグライン「New Atlas for Digital Assets」に触れながら、こう続けました。

「AI駆動の金融と組み込み型金融を本質的に動かしているのは、”お金の定義”そのものの変化です。お金がネットワーク上でどう表現され、どう移動するか。デジタル通貨、リアルワールドアセットのトークン化、ステーブルコインの採用 ―― これらが組み込み型金融やAIと融合することで、グローバルな金融トレンドの”第3の柱”が形成されつつあります」


第2章:ブロックチェーンの真価 ―― 「5日間」を「数分」に変える

神本氏は次に、より根本的な問いを投げかけました。「ブロックチェーン技術は、金融の変革においてどのような役割を果たすのか?」

モハンティ氏の答えは明快でした。

「ブロックチェーンが何かを、この会場の皆さんに説明する必要はないでしょう。問題は、私たちが解決しようとしている2つか3つの根本的な課題です。それは”決済(Settlement)”です」

現在の金融システムでは、資産の所有権が移転するまでに最大5日間かかる。しかし、AIと組み込み型金融が普及した世界では、5日間の決済など待っていられない。

「数分で決済しなければならない。ブロックチェーンは、その問題への答えです」

同時に、モハンティ氏は課題も率直に認めました。ネットワークの相互運用性(インターオペラビリティ)、標準規格の策定、そしてどの通貨がネットワーク上で動くのか、規制当局がどのような役割を果たすのか ―― この5〜6年間の議論は、まさにこれらの論点を巡って展開されてきたといいます。

「しかし、価値提案(バリュー・プロポジション)は絶対的に明確です。決済と信頼構築において、ブロックチェーンは圧倒的に優れている。資産設計、資産所有、ネットワーク活用のコストも遥かに安い。非流動性資産を流動性資産に変換する際のリアルワールド適応力も抜群です。もはや議論の段階ではない。問題は、実体経済がいかに簡単に使えるようにするかです」


第3章:規制の「明確なシグナル」 ―― トランプ政権とAPACへの波及

神本氏はさらに踏み込みます。「この1年、米国ではトランプ政権下で大きな政策転換がありました。これはAPACやシンガポールにどのような影響を与えますか?」

モハンティ氏は、米国の「Genius Act」や「Clarity Act」に言及し、こう分析しました。

「新政権による規制面でのシグナリングは、”この市場は本物であり、存続する”という確認です。ビットコイン価格の上下は別の要因ですが、規制の明確性(レギュラトリー・クラリティ)に関しては、いくつかの明確なトレンドがあります」

モハンティ氏が挙げた具体的なトレンドは以下の通りです。

ステーブルコインの定着と規制整備。 日本では銀行主導の円建てステーブルコインの創設が進み、シンガポールではG10通貨の単一通貨ステーブルコインが規制当局の承認のもとで構築されています。ステーブルコインネットワークの取引高は3〜4兆ドルに達し、VisaやMasterCardの決済網にも匹敵する規模に成長しています。

クロスボーダー決済での実用化。 「新興国を含むグローバル市場では、企業間の国際送金に莫大な非効率が存在しています。より速く、より安く、より規制に準拠した形でのクロスボーダー決済 ―― その唯一の現実的な答えが、デジタル通貨のレール上にステーブルコインを載せることです。輸出者、輸入者、買い手、売り手 ―― すべての当事者にとって、スマートコントラクトによる迅速な決済は信頼の基盤になります」

機関投資家のヘッジ手段としての需要。 デジタル資産をヘッジ目的で保有する機関投資家の参入も加速しているとモハンティ氏は付け加えました。

「一言で言えば、規制当局は”合理的にこの市場を後押しする”方向に動いています。なぜなら、それが実体経済の課題を解決するからです」


第4章:「日本は”一生に一度のチャンス”を手にしている」

セッション終盤、神本氏は最も重要な問いを投げかけました。「デジタルアセットとデジタルマネーの分野で、日本に何を期待しますか?」

モハンティ氏の答えは、単なる激励ではありませんでした。それは、データと構造に裏打ちされた戦略的な確信でした。

「今週のJapan Fintech Weekでは、日本がこの分野で何をしているかに大きな焦点が当てられるでしょう。金融庁(FSA)によるオープニングキーノートでは、プログラマブルマネーや銀行担保型ステーブルコインへの真剣な関心が示されました」

「世界は日本を見ています。デジタル通貨の分野で、日本が一定のリーダーシップ・ロールを果たすことを期待しているのです」

その根拠として、モハンティ氏は日本の「強固な規制フレームワーク」と「堅実な国内市場」を挙げました。

「もし日本がその選択肢を実現すれば、それはアジア市場のトレンドを決定づけ、さらにはグローバル市場のトレンドをも方向付けるでしょう。日本は極めて重要な役割を果たし得るのです」

そして、モハンティ氏は会場に向けて声を強めました。

「日本市場には、本当にそのリーダーシップの役割を果たしてほしい。皆さんにはその機会がある。”一生に一度のチャンス”です。金融市場、特に強固な国内資本市場の在り方が変わろうとしている今、この資本配分のシフトが起これば、日本はリーダーになれる」


終章:「世界は見ている。日本がリーダーの座に就くことを」

セッションの最後に、神本氏がオーディエンスへのメッセージを求めると、モハンティ氏はこう締めくくりました。

「この新しい世界にコミットし続けてください。世界は ―― 特に日本に対して ―― リーダーシップ・ポジションを取ることへの期待を持っています。今日、そして明日からのJapan FinTech Forum、さらに来週のFIN/SUMでも、良い議論ができるでしょう。私は非常に楽観的です。きっとうまくいく」

20分という短い対談の中に、モハンティ氏が描いたのは壮大な地図でした。FinTechからAI Finへの転換、組み込み型金融の成熟、そしてデジタル通貨による「お金の再定義」。この3つの潮流が交差する場所に、日本は立っている。

問われているのは、技術力ではない。ビジョンでもない。日本にはその両方がある。問われているのは ―― 「やるのか、やらないのか」。

モハンティ氏の目には、その答えはすでに明らかなようでした。


イベント概要

  • イベント名: デジタル通貨カンファレンス 2026 — FUTURE OF DIGITAL MONEY
  • 日時: 2026年2月24日(火)12:20〜12:40
  • セッション: オープニングセッション co-hosted by GFTN
  • 登壇者: ソプネンデュ・モハンティ(GFTN Group CEO)/ 神本 侑季(N.Avenue株式会社 代表取締役CEO)
  • 主催: NADA NEWS / GFTN / Japan Fintech Week 2026

本記事はJapan Fintech Week 2026「デジタル通貨カンファレンス」オープニングセッションの内容をもとに構成しています。

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