登壇者・セッション概要
登壇者はSzymon Slowik(シモン・スロヴィク)氏——Founder, takaoto.pro。ポーランドを拠点に15年以上の経験を持つSEOストラテジストで、スポンサード記事に7年・約$300万(4.5億円)を投じた実践家です。

このレポートで得られる知識として、「SEOは死んだ」「AIがGoogleを代替する」というFOMOを一刀両断する論理的根拠、AIがコンテンツをコモディティ化した結果なぜオフサイト信号が「唯一の差別化要因」になったか、メンション・リンク・指名検索の「三位一体管理」で権威を構築する設計思想、PBNを「ブラックハット」ではなく「AIへの物語供給源」として再定義する最先端戦術、AI Overviewジャック・地理的コストハック・Video SEO・UTM汚染リスクの回避まで——を網羅しています。
3行サマリー:AIでコンテンツがコモディティ化した今、オフサイト信号(リンク・メンション・指名検索)が唯一の差別化要因になりました。PBNは「リンクツール」ではなく「AIへの物語供給源」として再定義することで、AI Overview・Gemini・ChatGPT全てで引用されるようになります。SEO担当者に求められるのは「リンク技術者」から「ナラティブ(物語)の設計者」へのシフトです。
第一部:AI FOMOの正体とSEOの「不変の基礎」
セッション開始の16時。ホストが「Are we fucking excited?」と叫ぶ熱狂の中、シモン氏は対照的に穏やかなトーンで語り始めました。
「LinkedInを開くたびに新しい言葉が生まれている。『EEO』『LMO』『AIO』…。正直、私には『昔からやっていることに、新しい名前を付けただけ』のように見えます。我々は今、AIによるFOMO(取り残される恐怖)に圧倒されています」——この冒頭の一言で、会場の空気がガラリと変わりました。
「新しいGoogleは存在しない。ただノイズが大きくなっただけ」
シモン氏はまず「AIはSEOの基礎を変えていない」と断言しました。Googleは10年以上前からすでにAI検索エンジンであり、AI Overview(旧SGE)はそれを一般ユーザーにも「見えるようにした」に過ぎません。LLMやAIチャットも「他のドキュメントからデータを引っ張ってきている」——それがあなたの「オフサイト・コンテキスト」です。
Googleの「基礎システム」は3つで構成されています。セマンティクス(意味論):コンテンツの意味的な関連性・文脈の理解。リトリーバル(情報検索):適切なドキュメントを見つけ出す仕組み。クオリティ・アセスメント(品質評価):コンテンツ・ブランド・権威の総合評価。この3つへの理解可能性がすべてを決定します。
新しいツールや戦術が出てきたら自問してください——「それはセマンティクスを助けるか? 品質を向上させるか? 権威を高めるか? 発見可能性を上げるか?」Yesならワークフローに加える。Noなら小規模テストか保留。戦略が台無しになるのは、新しいものに反応的に飛びつき、一貫性を失う時です。
ChatGPTはGoogleを代替しない——SparkToroデータが示す現実
シモン氏はChatGPTがGoogleを代替するという恐怖についても、SparkToroのデータを引用し一蹴しました。「Googleは安全だ。ChatGPTは補完的なツールであり、SNSの登場時と同じ構図だ」と言います。
さらに重要な論点として、AIのハルシネーション問題を挙げました。AIが嘘をつかずに回答を生成するには「グラウンディング」——クラシックな検索結果や外部ドキュメントへの参照が不可欠です。つまりAI検索が普及すればするほど、そのAIに「引用されるコンテンツ」=SEOの価値が高まるという逆説が成立します。
【LIF Tech視点】「AIがGoogleを殺す」という言説は、毎年「Facebookがメールを殺す」「動画がブログを殺す」と言われ続けてきた構造と全く同じです。新しいメディアは既存のメディアを「代替」するのではなく「補完」する形で共存します。しかしその補完過程で「影響を受けるコンテンツのカテゴリ」は確実に存在します。情報探索系の薄いコンテンツは確実にゼロクリック化しており、これを「SEO全体の死」と混同するのが最大の認知の歪みです。
第二部:AIが変えた唯一の現実——オフサイト信号が「王様」になった理由
「AIはコンテンツ制作を『信じられないほど安く』、『無限にスケーラブル』にしました。誰もがコンテンツを自動で、大量に生成できる時代です。だからこそ、オフサイト信号がこれまで以上に重要になる」——この一言で会場の空気が変わりました。
オンページがコモディティ化(均質化)した今、「権威こそが唯一の差別化要因」だとシモン氏は語ります。「リンクビルディングは死んだ」と毎年言われますが、真実は逆——リンクとそれを取り巻くあらゆるオフサイト信号が、今、最も重要です。
なぜオフサイト信号が「唯一の差別化要因」になるのか、構造的に整理します。AIツールの普及前、コンテンツの質・量・網羅性は「努力と時間」で差がつきました。しかし現在、GPT-4やClaudeを使えば、数時間で競合と同品質の記事を大量生成できます。テクニカルSEOも自動化ツールが普及し、技術的な差もつきにくくなりました。
その結果、「誰でも作れるもの」では差別化できません。逆に「誰でも作れないもの」——他サイトからの被リンク・ブランドへの言及・ユーザーによる指名検索——はAIで自動生成できません。だからこそ、オフサイト信号だけが本物の競争優位となります。Slowik氏が実践を通じて得た結論は「コンテンツを書くことより、そのコンテンツに権威を与えることの方がはるかに難しく、はるかに価値がある」ということです。
【LIF Tech視点】この「コンテンツのコモディティ化」は、私がLIF Techを運営する中で最もリアルに感じている変化です。2024年から2025年にかけて、AIで生成した薄いコンテンツのランクが軒並み下落しました。一方で、現地取材・独自データ・専門家インタビューを含む記事は流入が伸びています。「AI生成コンテンツを量産すれば勝てる」という発想が完全に崩れ、「AIで作れないもの」を戦略の核に置く必要性を強く実感しています。
第三部:2026年のオフサイトSEO管理術——「制御された物語」の構築
オフサイト信号の「三位一体」——バックリンク・メンション・指名検索
オフサイト信号とは「バックリンクだけ」ではありません。シモン氏は3つの信号を「補完的なシステム」として設計することの重要性を強調しました。
🔗 BACKLINKS(権威を与える):マネーキーワードで戦う力の源泉。「リンクは死んだ」は嘘——むしろ今が最重要です。AIが高権威のリンクを持つページを参照する傾向があるため、被リンクの質と関連性はAI時代においても権威の根幹をなします。
💬 MENTIONS(存在を認識させる):AIに「あなたが実在するブランドである」ことを認識させます。リンクを「自然」に見せる座布団の役割を果たします。ブランド名がリンクなしでも様々なコンテキストで言及されることで、AIはそのブランドを「実在する信頼できる存在」として認識するようになります。
🔍 BRAND SEARCH(信頼を確認させる):ブランド指名検索は「信頼されている」ことの確認シグナルです。HCU(Helpful Content Update)でリンクがあっても指名検索がゼロのサイトはペナルティを受けた事例があります。ユーザーが自発的にブランド名を検索するという行動は、AIがコンテンツの信頼性を評価する上で最も強力な外部シグナルの一つです。
「相関」と「因果」の罠——メンション最強説への反論
「AI Overviewでの表示とブランドメンションに高い相関がある」という調査が出回っていますが、シモン氏は冷静に分析します。相関は因果を意味しません——強いブランドは自然にメンションされますし、自然に高権威のリンクも持っています。ほぼ全てのリンクは技術的にメンションを含んでいます。メンションだけをスケールさせても、権威がなければ意味がありません。
「高権威ページの『ブランドメンション(ただのテキスト)』を『リンク(do-follow)』に変更できるとしたら、変更しませんか? 私なら絶対にやります。これらは競合するものではなく、”補完的なシステム”です」——メンション vs リンクの二項対立を一蹴した一言です。
「自然(Natural)」の危険性——ディズニーの事例
Googleは「素晴らしいコンテンツを作ればリンクは自然に集まる」と言います。しかしすべての「自然な」リンクが良いものとは限りません。ディズニーは無関係なサイト群から1,000以上の「自然な」リンクを獲得した結果、サイトリンクがブラックハットSEOのパッケージ名にハイジャックされる被害を受けました。
「自然に任せるのは危険です。私は、オフサイト信号を制御し、設計することを選びます」——この言葉がセッション全体の哲学を象徴しています。「物語を語られる側」ではなく「物語を語る側」に回ることが、現代のオフサイトSEOの本質です。
戦術比較——なぜ「スポンサード記事」が最強か
シモン氏は7年間・約$300万(4.5億円)をスポンサード記事に費やした経験から、各リンク獲得戦術を比較しました。
スポンサード記事(最推奨):アンカー・周囲テキスト・タイトル・発リンク数・掲載場所すべてを制御できます。7年で約$300万を費やして機能を実証済みです。「制御力」こそがスポンサード記事の最大の価値であり、これがシモン氏が他の戦術より圧倒的に優先する理由です。
デジタルPR(限定的に有効):NYタイムズのような「買えないリンク」獲得には最強ですが、それ以外なら買った方がコントロールできます。コントロールが低く、ROIの予測が困難です。
ニッチエディット(要注意):Googleはドキュメントのバージョンを検証します。文脈の変更なしにリンクだけ追加するのは明確なフットプリントになります。既存記事に不自然にリンクだけ差し込む行為は、Googleが文書の更新履歴を追跡する能力を持つ現在、高リスクです。
安価なゲストポスト(セカンドティアに有効):「盲目的に高品質指標だけを追うわけではない。機能するものが勝ち」。セカンドティア(被リンクの被リンク)として合理的に使えます。
第四部:実践編——PBNとAIを「ハック」する7つの最先端戦術
前提:AI OverviewがTop of Funnelを「殺した」
AI OverviewやChatGPTは「ゼロクリックサーチ」を増大させ、Top of Funnel(情報検索系クエリ)での集客を実質的に壊しました。今集中すべきはMid-funnel(比較・評判)とBottom-funnel(購入検討・指名)です。Ahrefsでは検索ボリュームがレポートされないようなニッチなクエリも多いですが、実際にトラフィックとコンバージョンを駆動します。これを理解した上で、以下の7つの戦術を設計します。
戦術01:AI Overviewジャック&パラサイトSEO
ターゲットクエリでAI Overviewにすでに引用されている権威サイトを見つけ、そのサイトにリンク付きスポンサード記事を出稿します。結果として、AI Overview内に「あなたのブランドを宣伝しあなたのサイトにリンクする記事」が表示されます。ユーザーがどこをクリックしてもあなたのブランドに行き着く状態を作ります。
手順は明快です。①Ahrefsで「ターゲットクエリ+site:権威サイトドメイン」で検索。②AI Overviewに引用されているページを特定。③そのページの編集者にスポンサード記事の出稿交渉。④リンク付き記事を掲載。この戦術の核心は「AI Overviewを外から操作しようとするのではなく、AIが既に信頼しているサイトの内部に入り込む」という発想の転換です。
戦術02:PBNを「AIへの物語供給源」として再定義する
シモン氏が最も力を込めて語った戦術です。PBN(プライベート・ブログ・ネットワーク)を「リンクのため」に使うのではなく、「AIが学習する物語を供給するため」に使います。
ポーランドのミールプレップ(食事宅配)企業での事例:クライアントは実際に品質の高いサービスを提供していましたが、オンライン上でのブランド言及が少なく、AI検索結果で競合に後れを取っていました。「実際に良いレビュー」という事実に基づく物語を、約50のPBNで増幅させました。結果、AI Overview・Gemini・ChatGPT・Perplexityすべてで「ベストな選択肢」として引用されるようになりました。
重要なのは「事実に基づく物語」という点です。AIはハルシネーションを防ぐために複数のソースで検証します。嘘の物語を広めようとしても、反論するソースが存在すればAIはその情報を採用しません。「制御された物語供給」は「でっち上げ」ではなく「事実の増幅」です。
戦術03:プレスリリースによる「AIへの刷り込み」
100のローカルニュースメディアで同時プレスリリースを配信し、関連リンクを含めます。AIが関連クエリでその記事を引用するようになります。AIはプレスリリースも学習ソースとして認識します。「リスト記事(リフティクル)」もAIが大好きな構造化コンテンツとして同様の効果を持ちます。
「業界ベスト10」「おすすめサービス比較」といったリスト系コンテンツを大量に生成し、そのリストに自社ブランドを含める戦術は、AI Overviewが比較・推薦クエリで頻繁にリスト系コンテンツを引用する傾向があることを利用しています。
戦術04:地理的コストハック
Googleリーク情報によれば、異なる地域からのリンクは関連コンテンツがあれば問題なく機能します。米・英をターゲットにするなら、ポーランド・ルーマニア・アルゼンチンから安い英語スポンサード記事を買うことでROIを大幅改善できます。リンクプロファイルの多様化にもなります。
具体的な単価感として、米国の権威メディアへのスポンサード記事が$500〜$2,000かかるところ、同等のDAを持つ東欧・南米のメディアなら$50〜$200で取得できるケースがあります。英語コンテンツという条件さえ満たせば、地理的な発信元は評価に大きく影響しません。
戦術05:Video SEO+記事への動画埋め込み
YouTubeは爆発的に伸びています。素晴らしいクリエイターである必要はありません——ChatGPTで台本、Canvaでスライドショー、コメンタリーで完成します。さらにその動画をスポンサード記事に埋め込むことで記事の品質評価を高め、効率化できます。
動画コンテンツの重要性はAI時代においても増しています。AI OverviewはYouTube動画を直接引用することがあり、特に「How-to系」「比較系」クエリでは動画が強力なソースとして機能します。テキストとビデオの両軸でブランドの物語を供給することで、AIが参照する複数のソースに同時にリーチできます。
戦術06:画像リンクの活用
Semrushの調査でAI検索結果と「画像リンク」の間に強い相関があります。スポンサード記事にインフォグラフィックやチャートを埋め込み、その画像自体にリンクを設定することでリンクプロファイルを多様化させます。テキストリンクだけで構成されたリンクプロファイルは不自然に見える場合があり、画像リンク・動画埋め込み・ブランドメンションを組み合わせることで「自然なブランドのオンライン存在感」を演出できます。
戦術07:ZMOT(Zero Moment of Truth)の支配
AI Overviewでゼロクリックが増えても、その後ユーザーはブランドを指名検索します——これがZMOT(購入前の真実の瞬間)です。LinkedIn・Xのピン留め・Instagramハイライト・各種Wiki(WikiGeniusなど)・あらゆるプラットフォームで「同一の物語」を語り、AIが学習するあらゆる場所でナラティブを制御します。
「AI Overviewで答えを得たユーザーが次に何をするか」を考えると、この戦術の重要性が理解できます。ゼロクリックで情報を得たユーザーの多くは、その後「ブランド名+レビュー」「ブランド名+評判」で指名検索します。このZMOTの段階で「信頼できる評価・事例・物語」が豊富に存在するブランドが、最終的な購買決定を勝ち取ります。
重大注意点①(Eコマース):マーケットプレイス(Amazon等)のコンテンツを最適化しすぎないこと。ブランド名指名検索からマーケットプレイスをクリックさせると、Googleへの悪いシグナルになります。
重大注意点②(UTM汚染):GBP(Googleビジネスプロフィール)にUTMパラメータを設定していると、LLMがそのまま回答に含め、Google AnalyticsのアトリビューションデータがAIに汚染される可能性があります。GBPのURLにはUTMパラメータを設定しないか、設定する場合は影響を十分に検証してから実施してください。
結論:SEO担当者は「リンク技術者」から「物語の設計者」へ
シモン氏は「マーケターのように振る舞え。Googleは本物のブランドを評価したいのだから」と締めくくりました。
2026年に機能する戦術を整理します。コアオフサイト信号:スポンサード記事・バックリンク・ブランドメンション・指名検索を三位一体で管理します。AI物語供給:PBN(事実に基づく物語の増幅)・プレスリリース一斉配信・リスト記事(リフティクル)を活用します。AI Overview対策:引用済みサイトへのスポンサード記事(パラサイトSEO)・画像リンク・動画埋め込みで対応します。ZMOT設計:全プラットフォームで一貫した物語を配置し、WikiGeniusなどAIクロール対象Wikiを活用します。FOMO回避:信頼できる数人の情報を自分専用のRAG(カスタムGPT)に投入し、自己フィルタリングします。
LIF Tech 編集後記:日本市場への実務示唆
シモン・スロヴィク氏のセッションは、今回のカンファレンスで最も「未来」と「現実」を突きつけてきたものでした。彼は「AI時代だからこそオフサイトが重要」というありきたりな結論に留まらず、「PBNをAI(LLM)に物語を学習させるための供給源として再定義する」という一歩先の戦術を具体的に示しました。
AIによってコンテンツが無限に生成される今、そのAIの「教師データ」となる「権威ある言及」自体を戦略的に設計・供給していく。SEOは「リンク技術者の時代」から、AIの学習プロセスそのものに介入する”物語の設計者(ナラティブ・デザイナー)”の時代へと移行しました。
日本市場への3つの示唆:
① 三位一体管理の欠如:日本では依然として「被リンク数」や「EEAT強化」を切り離して考える傾向があります。Slowik氏の議論はその中間にある「リンク=権威の言語」という中核を射抜いています。メンション(存在証明)×リンク(権威)×指名検索(信頼)の三位一体設計が不可欠です。
② 地理的コストハックの未活用:スポンサード記事の「制御力」を正しく理解し地理・媒体単価を最適化する発想は、日本のSEO・PR領域ではまだほとんど定着していません。東欧・東南アジアの英語メディアを活用したリンク獲得の効率化は、グローバル展開を目指す日本企業にとって即実装できる戦術です。
③ AI引用設計の重要性:AI Overview(旧SGE)やPerplexity・Geminiに「引用される側」を設計するという発想は、EEATとLLM Visibility Optimizationを同時に達成する二重効果を持ちます。「Google検索で上位表示されること」と「AIに引用されること」は別の戦略を必要とし始めており、この両軸を同時に設計できる実務家が2026年以降のSEO市場で圧倒的な価値を持ちます。
GITEX AI EUROPE 2026(ベルリン、2026年6月)メディアパートナー。SEO・AI活用・オフサイト戦略のご相談はLIFRELLまでお気軽にどうぞ。
LIF Tech 編集部(株式会社LIFRELL 佐藤祐介)
本記事はSEOカンファレンス現地取材に基づくレポートです。登壇者の発言内容は筆者による意訳・要約を含みます。Googleアルゴリズム・各ツールの仕様は変更される場合があります。PBNやスポンサード記事等の戦術はGoogleのガイドラインとのリスクを十分理解した上でご判断ください。

