LangChainとは?v1.0の変更点・使い方・RAG実装を解説【2026年】

2026年8月最新 — v1.0の破壊的変更に対応
LangChainとは?
v1.0で何が変わったか・使い方・
RAG実装まで完全解説【2026年】

LangChainは2025年10月22日にv1.0が正式リリースされ、それ以前の解説記事・チュートリアルの大半が使えなくなった。主役だったChaincreate_react_agentcreate_agentに統合され、新たにミドルウェア機構が入った。この記事では「v0.x時代の情報」と「v1.0以降」を明確に切り分けたうえで、基本概念・RAG実装・LangGraphとの使い分けまでを解説する。

v1.0の移行ポイント
RAG実装コード付き
LIF Tech
目次

1. 結論——今から学ぶなら何を押さえるべきか

先に3行でまとめる。

LangChainは「LLMアプリを組み立てるための部品箱」。モデル・プロンプト・検索・ツール呼び出しを共通のインターフェースで扱えるようにするOSSフレームワーク

v1.0(2025年10月22日)で設計思想が変わった。中心はChainからcreate_agentへ。ネット上のv0.x時代のコードはそのままでは動かないものが多い

複雑な分岐・ループが必要ならLangGraphを併用する。LangChain=構築、LangGraph=実行、LangSmith=運用、という役割分担になっている

⚠️

学習時の最大の落とし穴:情報の鮮度。LangChainはv0.x時代の記事・書籍・Qiita投稿が大量に存在する。2025年10月より前の情報を見て写経すると、importパスが違う・クラスが存在しないといったエラーで詰まる。参照する情報が「v1.0以降か」を必ず確認してほしい。

2. LangChainとは何か——3層エコシステムで理解する

LangChain(ラングチェーン)は、大規模言語モデル(LLM)を使ったアプリケーション開発のためのオープンソースフレームワークだ。PythonとTypeScriptの両方に対応している。

単体で理解しようとすると混乱しやすいので、まず3つのレイヤーで全体像を掴むのが近道だ。

Layer 1 — 構築
LangChain

モデル・プロンプト・検索・ツールを共通インターフェースで扱う。エージェントを組み立てる部分を担う

Layer 2 — 実行
LangGraph

複雑なワークフローをグラフ構造で表現・実行・管理する。条件分岐やループ、人間の承認を挟む処理はここ

Layer 3 — 運用
LangSmith

エージェントの動作を監視し、性能を評価する商用プラットフォーム。本番運用の可観測性を担う

何を解決するフレームワークなのか

LLMを使ったアプリを素で書くと、次のような面倒が発生する。

  • OpenAI・Anthropic・Googleでそれぞれ API の書き方が違う
  • モデルを乗り換えるたびにコードを書き直す必要がある
  • PDFやWebページを読み込んで検索可能にする処理を毎回自作する
  • ツール呼び出し(Function Calling)のループ処理を毎回書く

LangChainはこれらを共通の部品として提供する。モデルを1行変えるだけでOpenAIからAnthropicに乗り換えられる、というのが分かりやすいメリットだ。

用途に応じたモデルの選び方はAIモデルの使い分け方|タスク別おすすめLLM、API料金を抑える考え方はAIコスト最適化完全ガイド|企業のAI利用料削減方法と事例で整理している。

3. 【重要】v1.0で何が変わったか

2025年10月22日、LangChainとLangGraphが揃ってバージョン1.0として正式公開された。ここが学習コストを大きく左右するポイントなので、詳しく扱う。

変更点①:create_agentへの統合

v0.x時代、エージェントを作る手段は複数あり、しかも一部はLangGraph側のcreate_react_agentを使う必要があった。v1.0ではこれらがlangchain.agents.create_agentに統合されている。

# v1.0の書き方
from langchain.agents import create_agent

agent = create_agent(
model=”anthropic:claude-sonnet-4-5″,
tools=[search_tool, calculator_tool],
prompt=”あなたは丁寧なリサーチアシスタントです。”,
)

result = agent.invoke({“messages”: [{“role”: “user”, “content”: “調べたい内容”}]})

モデル・ツール・プロンプトを渡すだけで、内部のエージェントループ(モデル呼び出し→ツール実行の繰り返し)は自動管理される。v0.xで必要だったループ処理の記述が不要になった。

変更点②:ミドルウェア機構の追加

v1.0の目玉がこれだ。実行の各段階にフックを挟めるようになった。具体的には次のような処理を差し込める。

  • ツール実行の前に人間の承認を挟む
  • モデルに渡す前に個人情報を自動マスクする
  • 実行前後にログ・監査記録を残す
  • 特定条件でリトライ・フォールバックする
💡 これは単なる便利機能ではない。「AIに何をさせないか」をコードで担保できるようになったという意味で、法人利用における重要な進化だ。個人情報のマスキングや人間承認の仕組みを、アプリ側で毎回自作する必要がなくなった。

変更点③:旧APIの分離

v0.x時代のクラス群の多くは@langchain/classic(Pythonではlangchain-classic)へ移された。importパスの変更が必要になるため、既存プロジェクトの移行では公式の移行ガイドを必ず参照してほしい。

項目 v0.x v1.0以降
エージェント構築 複数の方法が混在(create_react_agent等) create_agentに統合
カスタマイズ コールバック等で個別対応 ミドルウェア機構で標準化
旧クラス群 langchain本体に同梱 langchain-classic に分離
LangGraphとの関係 機能が一部重複 構築=LangChain/実行=LangGraph に整理

4. 基本概念——押さえるべき5つ

① Model(モデル)

OpenAI・Anthropic・Googleなど各社のLLMを共通のインターフェースで呼び出す層。model="anthropic:claude-sonnet-4-5"のように文字列で指定でき、乗り換えが容易。ローカルLLMを使う場合はローカルLLMの始め方|LM StudioでQwen3.6/GLM/Gemma 4を動かすも参考にしてほしい。

② Prompt(プロンプト)

テンプレート化した指示文。変数を埋め込んで動的に組み立てられる。同じプロンプトを複数箇所で再利用できる。

③ Tool(ツール)

LLMが呼び出せる外部関数。Web検索・データベース照会・APIコールなどを定義しておくと、モデルが必要に応じて自律的に呼ぶ。MCPサーバーをツールとして接続することも可能で、この仕組みはGitHub MCPとは?できることやMCPサーバーの導入・使い方で解説している考え方と地続きだ。

④ Retriever(検索器)

ベクトルストアから関連文書を取得する部品。RAG(検索拡張生成)の中核になる。

⑤ Middleware(ミドルウェア)

v1.0の新概念。実行の各段階に処理を差し込む。人間承認・PIIマスキング・ログ記録などをここで実装する。

5. インストールと最小構成

# インストール(プロバイダのパッケージも合わせて入れる)
pip install langchain langchain-anthropic

# 環境変数にAPIキーを設定
export ANTHROPIC_API_KEY=”your-api-key”

最小の動作確認は次の通り。

from langchain.chat_models import init_chat_model

model = init_chat_model(“anthropic:claude-sonnet-4-5”)

response = model.invoke(“LangChainを一言で説明してください”)
print(response.content)

6. RAGを実装する——最小コード

LangChainが最も使われている用途がRAG(Retrieval-Augmented Generation/検索拡張生成)だ。社内文書をLLMに参照させて回答させる仕組みで、社内ヘルプデスクやFAQ自動応答の基盤になる。

RAGの処理フロー

STEP1

Load——PDF・Webページ・テキストを読み込む

STEP2

Split——長文をチャンク(断片)に分割する

STEP3

Embed & Store——チャンクをベクトル化してベクトルストアに保存

STEP4

Retrieve——質問に近いチャンクを検索して取り出す

STEP5

Generate——取り出したチャンクを文脈としてLLMに回答させる

実装コード

from langchain_community.document_loaders import PyPDFLoader
from langchain_text_splitters import RecursiveCharacterTextSplitter
from langchain_anthropic import ChatAnthropic
from langchain_openai import OpenAIEmbeddings
from langchain_community.vectorstores import FAISS

# 1. 読み込み
docs = PyPDFLoader(“company_handbook.pdf”).load()

# 2. 分割(チャンクサイズと重なりが精度を左右する)
splitter = RecursiveCharacterTextSplitter(
chunk_size=800,
chunk_overlap=100,
)
chunks = splitter.split_documents(docs)

# 3. ベクトル化して保存
vectorstore = FAISS.from_documents(chunks, OpenAIEmbeddings())
retriever = vectorstore.as_retriever(search_kwargs={“k”: 4})

# 4-5. 検索して回答生成
model = ChatAnthropic(model=”claude-sonnet-4-5″)

def answer(question: str) -> str:
found = retriever.invoke(question)
context = “\n\n”.join(d.page_content for d in found)
prompt = f”””以下の資料のみを根拠に、質問に答えてください。
資料に記載がない場合は「資料に記載がありません」と答えてください。

【資料】
{context}

【質問】
{question}”””
return model.invoke(prompt).content

print(answer(“有給休暇の申請手順を教えてください”))

💡

プロンプトの「資料に記載がない場合は〜」の一文が重要。これを入れないと、LLMは資料にない情報を推測で埋めてしまう(ハルシネーション)。RAGの品質はチャンク設計とこの指示の2つで大きく変わる。RAGとハルシネーションの関係はAIヘルプデスクおすすめ比較|RAGとハルシネーションの正確な理解で詳しく整理している。

チャンク設計のコツ

設定 目安 効果
chunk_size 500〜1000文字 小さすぎると文脈が切れ、大きすぎるとノイズが増える
chunk_overlap chunk_sizeの10〜20% チャンク境界で文意が途切れるのを防ぐ
検索件数(k) 3〜5件 多すぎるとコンテキストが膨らみコストが増える

7. ミドルウェアで実運用に耐える設計にする

ここがv1.0で最も実務価値の高い部分だ。PoC(試作)と本番運用を分けるのは、たいてい「止める仕組み」があるかどうかで決まる。

ユースケース①:ツール実行前に人間の承認を挟む

メール送信・DB更新・外部への発注など、取り返しがつかない操作はAIに単独で実行させるべきではない。ミドルウェアでツール実行前にフックを設け、承認を待つ設計にする。

ユースケース②:個人情報のマスキング

ユーザー入力に氏名・電話番号・メールアドレスが含まれる場合、モデルに渡す前に自動でマスクする。外部APIに機密が流出するリスクをアプリ層で構造的に防げる。この論点はObsidianの中身、Claudeの学習に使われる?情報漏洩リスクを徹底検証とも通じる。

ユースケース③:監査ログの記録

「いつ・誰の指示で・AIが何を実行したか」を残す。規制業界での導入や、社内監査への対応で必須になる。

💡 v0.x時代、これらは各社が独自にコールバックで実装していた。v1.0でミドルウェアが標準機構になったことで、「AIエージェントを本番に載せる」ためのハードルが明確に下がった。法人でLangChainを検討するなら、ここが最大の評価ポイントになる。

8. LangChainを使うべきケース・使わないべきケース

✓ 使うべきケース
  • 複数のLLMプロバイダを切り替える可能性がある
  • 社内文書を使ったRAGを自社で構築したい
  • ツール呼び出しを含むエージェントを作る
  • 人間承認・PIIマスキングを組み込む必要がある
  • PythonまたはTypeScriptで開発するチームがある
  • 処理内容を完全に自社でコントロールしたい
✗ 使わないべきケース
  • 単純なチャットボット1本だけ(APIを直接叩くほうが速い)
  • 社内にPython/TSを書ける人がいない
  • ノーコードで完結させたい(Difyなどが適切)
  • 学習コストをかけずに今週中に出したい
  • 条件分岐やループが複雑(LangGraph単体を検討すべき)

⚠️ 「とりあえずLangChain」は失敗しやすい

OpenAI APIを1回叩くだけの処理にLangChainを挟むと、抽象化のレイヤーが増えてデバッグが難しくなるだけだ。LangChainが効くのは「複数のモデル・複数のツール・複数のステップ」が絡む場合に限られる。要件がシンプルなら、素のAPI呼び出しのほうが保守しやすい。

ノーコードで済ませたい場合の代替

コードを書かずにRAGやエージェントを構築したい場合は、Difyのようなノーコード基盤が現実的だ。詳しくはDifyとは?使い方・料金・導入方法を解説、業務システムとの連携中心ならZapierとは?使い方・料金・自動化の始め方も選択肢になる。

9. 料金——OSSは無料、有料なのはどこか

対象 料金 備考
LangChain(OSS) 無料 MITライセンス系のOSS。ライブラリ自体に費用はかからない
LangGraph(OSS) 無料 同上
LLM API利用料 従量課金 実際のコストの大半はここ。OpenAI・Anthropic等への支払い
LangSmith Developer 無料 個人・小規模の可観測性プラットフォーム
LangSmith Plus $39/月〜 チーム利用向け
LangSmith Enterprise カスタム 大規模組織向け
💡

誤解されやすい点:LangChain自体は無料。コストが発生するのは①LLMのAPI利用料、②LangSmith等の運用プラットフォーム、の2つだ。特に①はRAGでチャンクを大量に投げると膨らみやすいので、検索件数(k)とチャンクサイズの設計がそのままコストに直結する。

10. よくある質問

LangChainとLangGraph、どちらを学ぶべきですか?
まずLangChainから始めてください。モデル・ツール・RAGといった基本部品の扱いを理解したうえで、条件分岐やループ、人間の承認を挟む複雑なワークフローが必要になった段階でLangGraphに進むのが自然な順序です。v1.0以降は「LangChain=構築、LangGraph=実行」と役割が整理されており、併用が前提の設計になっています。
ネットで見つけたLangChainのコードが動きません
v0.x時代の情報である可能性が高いです。2025年10月22日のv1.0リリースでimportパスやクラス構成が大きく変わり、旧APIの多くはlangchain-classicへ分離されました。参照している記事の公開日を確認し、v1.0以降の情報かどうかを確かめてください。
LangChainは無料で使えますか?
ライブラリ自体はオープンソースで無料です。ただしLLMのAPI利用料(OpenAI・Anthropic等)は別途発生します。また運用監視プラットフォームのLangSmithは、Developerプランが無料、Plusが月$39〜という体系です。
RAGの精度が上がりません。何を調整すべきですか?
優先度順に、①チャンクサイズと重なり(500〜1000文字、重なりは10〜20%が目安)、②検索件数kの調整(3〜5件)、③プロンプトに「資料に記載がない場合は答えない」旨を明示、の3つです。多くの場合、モデルを変えるより先にこの3つを詰めたほうが効果が出ます。
ミドルウェアは何に使うのが実務的ですか?
ツール実行前の人間承認、モデルへ渡す前の個人情報マスキング、監査ログの記録——この3つが代表的です。いずれも「AIに何をさせないか」をコードで担保する仕組みで、法人でAIエージェントを本番運用する際に必須になります。
Difyなどのノーコードツールとどう使い分けますか?
処理内容を完全にコントロールしたい、既存システムに深く組み込みたい、独自のミドルウェアを実装したい——こうした要件があるならLangChainです。逆に、社内の非エンジニアが自分でフローを編集したい、短期間で立ち上げたいという場合はDifyのようなノーコード基盤が適しています。
RAG・AIエージェントの内製化を検討しているなら

LangChainでのRAG構築は、コードを書くこと自体より「どの業務に適用するか」「どこで人間が止めるか」の設計で成否が分かれます。技術選定からミドルウェアを含む運用設計まで、LIFRELLのAIマーケティング相談をご活用ください。各種AI・SaaSツールを実際に有料契約して検証している立場から、現場目線でサポートします。

社内での生成AI定着から着手したい場合は生成AIeラーニング研修おすすめ完全ガイドもご覧ください。

🔗
LIF Tech 編集部(株式会社LIFRELL)

// lifrell-tech.com — AI × マーケティング最前線

AIマーケティング・テクノロジー専門メディア。国内外のAIカンファレンスへの現地取材と、各種AI・SaaSツールの実契約による検証をもとに解説しています。v1.0の変更点はLangChain公式のリリースノートおよび移行ガイドの内容に基づき整理しました。GITEX AI EUROPE 2026(ベルリン)公式メディアパートナー。

本記事は2026年8月時点の情報をもとに作成しています。LangChainは更新が速いフレームワークのため、実装にあたっては必ず公式ドキュメントで最新のAPI仕様をご確認ください。掲載コードは動作の考え方を示すサンプルであり、本番利用の際はエラー処理・認証情報の管理を適切に実装してください。
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