AWA25バンコク現地レポート|「利益の70%を守る節税スキーム」の全貌と、日本人に絶対おすすめできない理由
この記事でわかること
- AWA25で公開された「香港・ジブラルタル・ドバイ3層スキーム」の仕組みと論理
- 領土外課税(Territorial Tax System)とは何か——その法的根拠と適用条件
- 日本居住者がこのスキームを使うと「脱税」になる理由(CFC税制・CRS)
- Umar氏が警告した「合法スキームが崩壊する最大の落とし穴」
- LIFRELLが「愚直な納税」を選ぶ経営哲学的理由
本記事は、海外カンファレンスで公開されたタックスプランニング手法を教育目的で取材・報告するものです。本記事で紹介するスキームは、日本居住者には適用不可であり、無断で実行した場合は「脱税」となります。税務上の判断は必ず税理士・弁護士等の専門家にご相談ください。
2025年12月、タイ・バンコク。世界中から5,000名を超えるトップアフィリエイター、広告運用者、EC事業者が集結した「Affiliate World Asia 2025(AWA25)」——デジタルマーケティング業界最大規模のカンファレンスに、LIFRELLの取材チームが現地入りした。
最新AIツール、クリエイティブ論、広告運用戦略が飛び交う数あるセッションの中で、立ち見が出るほど満員となっていたのが「Tax Optimization(税務最適化)」セッションだった。登壇者はPG Tax FinanceのCEO・Umar氏。「デジタルマーケティング業界のソウル・グッドマン」と紹介されたこの人物が語ったのは、「いかに稼ぐか」ではなく「稼いだ利益を国家からいかに守るか」という、極めて生々しい内容だった。
本稿では、現地で公開されたスキームの全容を詳細にレポートする。と同時に、LIFRELLがこのスキームを採用しない理由と、日本居住者にとって現実的な税務リスクを、専門的な観点から解説する。
序章:LIFRELLが「愚直な納税」を選ぶ理由
これから紹介するスキームは、個人資産の防衛という観点では一定の合理性を持つ。しかし、LIFRELLとして採用しないし、推奨もしない。その理由を最初に明示しておく。
「フリーライド」という経営上のリスク
今日、我々が不自由なくビジネスに集中できるのは、先人たちの納税によって整備されたインフラ——道路、法制度、高度な教育を受けた人材——があるからだ。その恩恵を受けてビジネスを育て、利益が出たら「税金の安い国へ移る」という選択は、経営倫理以前に構造的なフリーライドだ。
力のある企業や起業家が一斉に租税回避を選択すれば、国のインフラは荒廃し、次世代のイノベーターを生む土壌が失われる。長期的には自分のビジネス環境自体が劣化する——これは経営者として視野が狭く、意味のない行為だ。
「日本に居住し、日本に納税し、それでもなお世界で勝つ」——この姿を証明することが、LIFRELLとしての日本の次世代への最大の貢献だと考えている。小手先の節税にリソースを割くより、より大きな市場を開拓し、より大きな価値を創造することに集中する。
この前提を共有した上で、世界のマーケターたちが国家というシステムにどう向き合っているか——その実態を直視しよう。
第1部:セッション完全レポート|「稼いでも残らない」現実
成功者のパラドックス:実効税率70%という壁
Umar氏がスクリーンに映し出したのは、一人のトップマーケターの「残酷な現実」だった。英国・日本などの高税率国に居住しながら、年間約26万ドル(約4,000万円)の利益を出すケースだ。
約2.4億円
約1.9億円
課税による減少率
(所得税+住民税+社保等)
70万ドル稼いでも、手元に残るのは20万ドルだ。君たちはそのために、寝る間を惜しんで働いているのか?
所得税・住民税・社会保障費・法人税・消費税が多重に積み重なる高税率国の現実は、デジタルビジネスで大きな利益を出すほど、手残りが相対的に小さくなるという逆説を生む。これが「Tax Optimization」セッションに世界中のマーケターが殺到した理由だ。
第2部:スキームの核心|領土外課税(Territorial Tax System)とは何か
Umar氏が提示した解決策の核心は、「領土外課税(Territorial Tax System)」という税制上の原則を活用することだ。
領土外課税の仕組み
一般的な税制では、法人の設立地でその法人が得たすべての所得に課税する(全世界所得課税)。これに対して領土外課税とは、「国内で発生した所得には課税するが、国外で発生した所得(Foreign Sourced Income)には課税しない」という原則だ。ジブラルタルと香港が、この原則を持つ主要な地域として知られる。
デジタルビジネス(アフィリエイト・SaaS・ドロップシッピング等)との相性が特に良い。なぜなら、顧客は世界中に散在し、サーバーはAWSやGCP等のクラウド上にあるため、「どの国で発生した所得か」という所在地の論点において「国外所得」と認定されやすい構造を持つからだ。
ジブラルタルvs香港:2地域の比較
| 比較項目 | ジブラルタル | 香港 |
|---|---|---|
| 法人税(条件付き) | 0% | 0% |
| 情報の秘匿性 | 低い(公開情報) | 高い(Confidentiality) |
| 銀行口座開設 | 比較的容易 | 住所証明が必須・審査厳格 |
| 維持コスト | 低い(小規模なら監査不要) | 高い(年次監査義務あり) |
| 決済プラットフォーム | PayPal/Stripe/Shopify利用可 | PayPal/Stripe/Shopify利用可 |
| 推奨規模 | 中規模以下のアフィリエイター | 大規模Eコマース・貿易事業者 |
第3部:究極の3層スキーム|ドバイ持株会社を使った「完全非課税」設計
香港・ジブラルタルで法人税を0にしても、個人が生活費として引き出す段階で居住国の所得税が発生する——この問題を解決するのが、ドバイ(UAE)を持株会社として組み込む3層構造だ。
-
事業会社(Operating Co):香港またはジブラルタル
世界中を対象にデジタルビジネスを展開。国外所得として法人税0%。 -
持株会社(Holding Co):ドバイ(UAE)
事業会社の100%親会社。事業会社からの配当をドバイ法人で受け取る。UAE法人への配当受取・送金課税0%。 -
個人(あなた):ドバイ税務居住者
ドバイ居住ビザ・税務居住証明を取得。ドバイ法人から役員報酬・配当を受け取る。UAEには個人所得税がないため所得税0%。
(国外所得)
(UAE受取)
(UAE居住者)
(高税率国比)
さらにUmar氏は「スペインのベッカム法(特別税制)」にも触れた。スペインに移住した最初の6年間のみ、国外所得(UAEからの配当等)を非課税とする特例で、欧州の生活環境を維持したい富裕層向けのオプションとして紹介された。
第4部:日本人には使えない理由|CFC税制・CRSという二重の壁
Umar氏自身がセッション末尾で明示した「推奨しないケース」の筆頭が「全世界所得課税(Worldwide Income Tax)の国の居住者」だ。日本はこれに該当する。日本に居住実態がある限り、以下のスキームを「使った」と認識した時点で脱税になりうる。
CFC税制(タックスヘイブン対策税制)とは
日本の税法には「外国子会社合算税制(CFC税制)」が存在する。日本居住者が低税率国(税率が一定以下)に支配する外国法人を持つ場合、その法人の所得を日本居住者の所得として合算し、日本の税率で課税するという制度だ。
つまり、香港やジブラルタルに法人を作って利益を出しても、その法人を日本居住者が実質的に支配しているなら、その利益は日本で課税される。法人の所在地がどこであれ、「あなたが日本に住んでいる」という事実が課税を決定する。
CRS(共通報告基準)による情報共有の現実
「海外の口座はバレない」という認識は、現代では完全に過去のものだ。CRS(Common Reporting Standard=共通報告基準)は、OECD主導の国際的な金融口座情報の自動交換制度で、2018年以降、日本を含む100カ国以上が参加している。
| 対策 | 内容 | 日本居住者への影響 |
|---|---|---|
| CFC税制 | 低税率国の外国子会社の所得を、日本居住者の所得に合算課税 | 香港・ジブラルタル法人の利益も日本で課税対象になりうる |
| CRS | 各国金融機関が保有する口座情報を税務当局間で自動交換 | ドバイ・香港の銀行口座情報が国税庁に報告される |
| 実質的支配者規制 | ペーパーカンパニーの実質オーナーを追跡する規制強化 | 形式上の名義と実態が異なる場合も調査対象に |
Q&A:Umar氏が警告した「最大の間違い」
人々が犯す最大の間違いは「居住実態(Substance)の欠如」だ。イギリスに住み続けながら、ドバイにペーパーカンパニーを作り、そこのカードで金を使いまくる。これは完全にアウトだ。プロが見ればすぐにバレるし、追徴課税で破産することになる。このスキームを合法的に成立させるには、本当に日本を捨てて完全移住する覚悟と行動が不可欠だ。
「合法スキーム」が「脱税」に転落する境界線は、居住実態(Substance)にある。日本に住み続けながら海外法人を維持するだけでは、課税回避の効果はなく、むしろ申告漏れによる重加算税・刑事罰のリスクを負う。
結論:バンコクの熱狂から持ち帰るべきもの
LIFRELLの決意——「国を背負う」ことが最強の戦略だ
AWA25で目の当たりにしたのは、世界のマーケターたちが「ルールのギリギリを攻めてでも利益を最大化する」という凄まじい執念だ。税制の穴、プラットフォームの間隙、あらゆるシステムを突いて生き残りをかけて戦う姿は、平和ボケした日本企業が持つべき「ハングリー精神」の手本でもある。
しかし、LIFRELLはその矛先を国家に向けない。税金を逃れる知恵を、「日本のコンテンツを世界に届ける方法」に使う。複雑な法人ストラクチャーの維持コストを、人材投資やプロダクト開発に回す。
「日本に居住し、日本に納税し、それでもなお世界で勝つ」——この姿を証明することこそが、LIFRELLとしての日本の次世代への最大の貢献だと確信している。ドバイに逃げる必要はない。日本から、世界を驚かせる成果を出す。
本記事はAWA25での公開セッション内容を報道・教育目的で取材・記録したものです。特定の税務スキームの実行を推奨するものではありません。個別の税務判断については、必ず日本の税理士・国際税務専門家に相談してください。税法は改正されることがあり、本記事の情報は取材時点(2025年12月)のものです。

