GEO × Cdiscount事例:ChatGPT商品カルーセルに表示される方法

登壇者:Idriss Khouader(Météoria CEO) / 2026年3月24日 / Agora Chopin

AIに「おすすめの商品を教えて」と聞いたとき、あなたのブランドは表示されているか。

2026年3月24日、パリで開催されたマーケティングカンファレンス「All4Customer」にて、フランスのGEOツール「Météoria」CEOのIdriss Khouaderが、EコマースとAI検索の交差点で今何が起きているかをリアルな事例とともに語った。テーマはChatGPTの「商品カルーセル」——検索でも広告でもない、AIによる商品推薦という新しい集客経路だ。


セッション開幕|登壇者の自己紹介

Idriss Khouader登壇 All4Customer Paris 2026

【Idriss Khouader(Météoria CEO)】:

「本日は、私たちがCdiscountというクライアントと一緒に取り組んできた事例をご紹介します。テーマは、ChatGPTがどのように商品カルーセルを構築しているか、そしてEコマース企業・リテーラーがどうすればそのカルーセルに表示されるか、です。」

「MétéoriaはChatGPT、Perplexity、GeminiといったAI生成型エンジンにおけるブランドの可視性を分析するツールです。ブランドがAIの回答に表示されているかどうかを分析して、表示されていない場合はどうすれば表示されるようになるかのインサイトを提供します。現在、50社以上のデジタルマーケティングエージェンシーと、100社以上のブランドと取り組んでいます。」


Météoriaの4つのユースケース

ひとつ目は「獲得(Acquisition)」。誰かがChatGPTで「最高のHRツールを比較して」と入力したとき、クライアントのソリューションが回答に表示されるようにする取り組みです。

ふたつ目が、今日メインでお話しする「Eコマース」。ChatGPTがどのように商品カルーセルを構築しているかを分析して、クライアントの商品がそのカルーセルに表示されるよう支援しています。

三つ目が「ジオローカル(Geo-local)」。実店舗を持つブランドに対して行う取り組みです。誰かがChatGPTに「パリで保険を探している」と聞いたとき、自社の拠点が回答に出てくるのか、競合他社の拠点が出てくるのか、それを測定・改善していきます。

四つ目は「ブランドノトリエテ(Brand Awareness)」。ブランドについて質問されたとき、AIがどのように回答しているかを分析します。ネガティブな記述があれば、AIがどのソースからその情報を引っ張ってきているのかを突き止め、そのソースに影響を与えることでAIの回答をコントロールしていく取り組みです。


なぜGEOがリテーラーにとって重要か

オンラインで情報を検索する方法が変わりつつあります。数十年にわたって、私たちはキーワードを検索エンジンに入力して、Googleにウェブサイトのリストが表示されて、自分でひとつひとつクリックして情報を集めていました。それが今、「レスポンスエンジン(回答エンジン)」の方向に変わってきています。

ChatGPTとPerplexityは単なる生成型AIから「リサーチエージェント」に進化しました。一方でGoogleはその逆をやっています。もともと検索エンジンだったGoogleが、その上にエージェント的な機能レイヤーを載せています。それがAI Overviewsであり、Geminiであり、Google AI Modeです。数年後にはChatGPTとGoogleは、少なくとも検索の部分ではほぼ同じことをやっていると思っています。

リテーラーにとって重要なのは、LLMから来るトラフィックの「質」です。Cdiscountのデータでは、LLMからのトラフィックは全体の約1%に過ぎません。しかしChatGPTやPerplexityから来たユーザーのコンバージョン率は、Googleやほかのチャネルよりもずっと高い。そしてこの1%という数字が月ごとに着実に増えています。


ChatGPT商品カルーセルの仕組み解説

商品購入に関連する質問をすると、ChatGPTは商品リストを返してきます。通常7商品で、小さな画像と一緒に表示されます。そのうちのひとつをクリックすると、平均1〜3つの「購入オプション」が表示されます。例えばFnac、Amazon、Dartyといったリテーラーが価格と一緒に出てくる。さらに「確認する(Consulter)」というCTAをクリックすると、そのEコマースサイトの商品ページに直接飛べます。

これはCTAボタンから直接トラッキングできる点が大きな違いです。エージェンシー名などはリンクが貼られないためアトリビュートが難しいですが、商品カルーセルの場合はChatGPT経由のトラフィックを正確に計測できます。


ステップ1:Query Fanout(クエリ展開)

Query Fanoutの仕組みスライド

すべてのプロンプトが商品カルーセルを発動するわけではありません。毎月100万件以上のプロンプトを分析した結果、カルーセルを発動させるプロンプトの半数は、明示的な購買シグナルを含んでいます。「買う」「最高の」「価格」「安い」といった言葉が含まれているプロンプトです。

カルーセルが発動すると、最初のステップとしてQuery Fanout(クエリ展開)が走ります。ChatGPTはプロンプトをGoogleで検索するためのキーワードに変換します。ChatGPT自身は独自のインデックスを持っていないため、Googleのインデックスを使っています。

重要なのは、日本語でプロンプトを投げても、ChatGPTは日本語と英語、両方のキーワードで検索するという点です。つまり日本国内でしか販売していない企業であっても、ChatGPTの回答に表示されるためには英語コンテンツが必要になる可能性があります。

また、Query fanoutのキーワードは平均10ワードと長く、ロングテールを検索しています。「テニスラケットを買いたい」というプロンプトでも、ChatGPTがブランドのレビューを検索することがあります。最も良いブランドを推薦できるようにするためです。


ステップ2:ソーシング(情報収集)

ソーシング(情報収集)ステップスライド

ChatGPTはGoogleに検索をかけて、1回の検索につき平均10〜30のソースを取得し、コンテンツを読んで商品を特定します。大規模分析で分かったソースの種類別内訳は以下の通りです。

  • 37%:商品ページ(PDPページ)
  • 15%:ブログ記事
  • 15%:カテゴリページ
  • 14%:比較サイト(コンパラトゥール)

カテゴリページと比較サイトが好まれる理由は、1ページで複数の商品情報を取得できる効率性にあります。LLMはページ処理にコストがかかるため、1ページで多くの商品を把握できるページを好む傾向があります。またRedditが非常に多く使われており、テーマによっては最上位ソースになることもあります。


ステップ3:Google Shoppingとの連携(購入オプション生成)

ソーシングで商品が特定されたら、ChatGPTはその商品名をGoogle Shoppingで検索します。これによって、その商品を販売しているリテーラーを特定し、購入オプションとして表示します。

つまり、ChatGPT商品カルーセルに購入オプションとして表示されるためには、Googleショッピングのフィードが最適化されている必要があります。フィードが最適化されていなければ、カルーセルに商品は載っても購入オプションに自社は出てきません。

実際にある化粧品ブランドのケースでは、Googleの通常検索では上位表示されていたにもかかわらず、Googleショッピングのフィードが未最適化だったため、カルーセルには商品が表示されても購入オプションは競合リテーラーに奪われていました。


リテーラーが追うべき4つのKPI

リテーラーが追うべき4つのKPIスライド
  1. ブランドのAI回答内メンション率:プロンプトを投げたとき、そもそも自社ブランドが回答に出てくるかどうか。
  2. 購入オプション(buying option)への表示率:ブランド名が回答本文に出なくても、購入オプションにリテーラーとして表示されることは可能。自社サイトが購入オプションとして表示されているかを追う。
  3. カルーセル内での商品の表示順位:通常7商品表示されるカルーセル内で何位に表示されているか。前の方ほど横スクロールなしで見てもらえる。
  4. 購入オプション内での表示順位:購入オプションは通常1〜3件。4件以上になると「もっと見る」が必要になるため、3位以内が重要。

Cdiscount独自のKPIとして、複数の購入オプションの中で自社が最安値かどうかも追跡しています。


Cdiscountの実践事例

Cdiscountが直面している最大の課題は、AIからのトラフィックを適切に追跡・アトリビュートすることが難しいという点です。ChatGPTには「Google Search Console」のような公式ツールが存在しないため、外部ツールで補完するしかない状況です。

Cdiscountが追っている3つのKPIは:

  • AIの回答内でブランドが言及されているか
  • 商品カルーセルにCdiscountの商品が表示されているか
  • CdiscountのウェブサイトがAIの情報ソースとして使われているか

特に3つ目が重要です。自社サイトがAIの情報ソースになれば、自社の情報をコントロールできる。ドメインがChatGPTにソースとして使われている頻度と、ブランドのAI回答内での可視性には非常に強い相関関係があります。


3,500プロンプトの監視体制

Cdiscountは350の商品カテゴリを監視しています。各カテゴリについて消費者がLLMで最も入力しそうな質問を10個選定。350カテゴリ × 10プロンプト = 合計3,500プロンプトを、3つのLLMに対して毎日チェックしています。AIの回答は固定されていないため、30〜50回投げることで傾向を把握します。

Cdiscount 3500プロンプト監視体制スライド

Frandroid記事による「ナラティブコントロール」の実例

Frandroid記事によるナラティブコントロール効果グラフ

Cdiscountは「Cdiscountで注文したら、ちゃんと届く?」「Cdiscountの配送はどう?」といった物流・信頼性に関するプロンプトを1,000件以上監視しています。問題は、こうした情報が自社ではコントロールできない第三者のソースに依存していた点でした。

そこでFrandroid(フランスの有名テックメディア)に記事を出し、物流・信頼性に関して伝えたいメッセージを正確に盛り込みました。そしてその記事がChatGPTのQuery fanoutで検索されるキーワードに対して上位表示されるよう最適化しました。

結果:記事公開後すぐにAIがピックアップし始め、現在はCdiscountの物流に関する質問の20%のケースで、ChatGPTがこのFrandroidの記事を情報ソースとして引用しています。

これがGEOの実践です。監視すべきプロンプトを正確に定義する → そのプロンプトに関連するQuery fanoutのキーワードで有利なコンテンツを上位表示させる → そのコンテンツがAIにソースとして使われる状態を作る。この一連のワークフローです。

日本でもChatGPTの利用は急拡大しており、商品カルーセルの展開は時間の問題だ。Googleショッピングの最適化とGEO対策は、もはや別の話ではない。フランスの最前線で起きていることは、1〜2年後の日本のEコマース担当者が直面する現実でもある。

(取材・文:LIF Tech編集部 / 現地取材:2026年3月24日 パリ)


目次

セッションの核心まとめ(日本のマーケター向け)

テーマ要点
カルーセルの仕組みChatGPT → Query fanout(日英混在キーワード生成)→ Googleで10〜30ソース取得 → 商品特定 → Googleショッピングで購入オプション生成
表示されるための必須条件Googleショッピングフィードの最適化が最重要。フィードが未整備だと購入オプションに自社は出てこない
英語コンテンツの必要性日本語でプロンプトを投げてもAIは英語クエリでも検索する。英語コンテンツなしでは可視性を最大化できない
KPI①ブランドメンション率 ②購入オプション表示率 ③カルーセル内順位 ④購入オプション内順位(最安値かどうか)
ナラティブコントロール信頼できるメディアに自社に有利なコンテンツを掲載 → AIがそれをソースとして引用する構造を作る
監視設計350カテゴリ×10プロンプト=3,500プロンプトを3LLMで毎日監視
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