Typelessは安全?危険と言われた理由とデータの扱い【2026年】

Typelessは、公式の説明では「話した音声と画面の文脈はクラウドで処理し、結果を返したらすぐ破棄する。保存も学習もしない」設計のAI音声入力アプリだ。運営元は米国カリフォルニア州パロアルトのSimply CA LLCで、トラストセンターではISO 27001が「準拠(Compliant)」、SOC 2 Type IIは「進行中(In Progress)」と表示されている(2026年11月7日確認)。一方で、処理は必ずクラウドで行われるため「端末から外に出ない」わけではない。2026年2月にSNSで「危険」と話題になった経緯もある。本記事では、公式のプライバシーポリシー・データ管理ページ・ヘルプ・トラストセンターで確認できたことだけを使い、何が送られ、何が残り、どう設定すれば安全に使えるかを整理する。

この記事の前提:仕様はTypelessの公式サイト(プライバシーポリシーとData Controlsはいずれも2026年10月13日更新)、ヘルプセンター、リリースノート、トラストセンターで2026年11月7日に確認した。SNSや個人ブログだけで確認できた内容は「個人の記事によると」と書き分けている。編集部が独自に通信を解析したわけではない。料金と基本の使い方はTypelessの料金・使い方にまとめている。

この記事でわかること

  • Typelessは安全か:公式に確認できたこと・できなかったこと
  • 「危険」と言われた理由(2026年2月の騒動)と、その後の公式の対応
  • 話した内容がどこへ送られ、どこに残るのか(図解)
  • 求められる権限の意味と、安全に使う設定の手順
  • 会社で使う前に確認したいことと、まだわからないこと
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目次

1. Typelessは安全か:結論

公式の説明を読む限り、一般的なメールやメモの下書きに使う分には、データの扱いは他の音声入力AIと比べても慎重な部類だ。ただし「クラウドに送られる」「第三者機関の監査報告(SOC 2 Type II)はまだ完了していない」の2点は前提として知っておく必要がある。

ここでいうクラウド処理とは、端末で録った音声をインターネット経由でサーバーに送り、サーバー側で文字にして整えてから端末に返す仕組みのことだ。Typelessは高い精度と速さを理由に、文字起こしをクラウドで行うと明記している(Data Controls)。

項目公式に確認できたこと(2026年11月7日)
音声の保存保存しない。音声と文脈は処理後すぐ破棄し、記録もしない(ゼロデータ保持)
AIの学習Typelessも第三者も、音声入力のデータを学習に使わない。例外は自分で送ったフィードバック(同意した場合のみ改善に使う)
処理の場所クラウド。データは米国に移転して処理すると記載
AIの委託先MicrosoftやGoogleなどのLLM提供元。保存も学習もしない「ゼロ保持」の契約を結んでいると記載
履歴端末内に保存。Cloud Syncをオンにしたときだけクラウドに履歴の文章を保存
データの販売販売しない
認証ISO 27001:準拠/SOC 2 Type I・Type II:進行中/HIPAA・GDPR:自己宣言(トラストセンターの表示)
運営会社Simply CA LLC(米国カリフォルニア州パロアルト)。創業者兼CEOはHuang Song氏

「安全かどうか」は、何を話すかで答えが変わる。公開済みの情報や一般的な下書きなら公式の設計で十分と考えやすい一方、パスワードや未公開の機密は、どの音声入力AIでも話さないのが原則だ。判断の目安は第5章で図にしている。

2. 「危険」と言われた理由:2026年2月の騒動

「Typelessは危険」という評判の多くは、2026年2月にX(旧Twitter)で広まった解析投稿がきっかけだ。公式サイトでは現在、権限の理由・運営会社・トラストセンターが公開されている。

個人の記事によると、2026年2月11日ごろ、Typelessを解析したとする投稿がXで拡散し、主に次の点が指摘された(藤井晃司氏のnote、ホリイケ カズマ氏のZenn記事)。

  • 「保存しない」「端末内だけ」という説明は本当か(音声はクラウドで処理されている)
  • カメラ・Bluetooth・画面録画などの権限を求めているのではないか
  • キーボード入力を記録する「キーロガー」のような動きをしているのではないか
  • 運営会社の名前や所在地がわかりにくい

同じ個人の記事によると、Typeless側は「求める権限はマイクとアクセシビリティの2つだけ」「キー入力の検知はショートカットを見分けるための端末内の処理」と回答したとされる。ただし、元の解析の詳細や公式回答の全文は公開されておらず、編集部は独自に検証していない。

公式サイトで確認できる事実は次のとおりだ。

  • クラウド処理は公式も認めている。Data Controlsに「文字起こしはクラウドで行う」と書かれている。「音声が端末から出ない」わけではない。
  • Macで求める権限は2つ。公式のセットアップ手順で求められるのは「アクセシビリティ」と「マイク」だ(Install and set up Typeless on macOS)。
  • 運営会社は明記されている。2026年11月7日時点のAboutページに、Simply CA LLC(パロアルト)と創業者兼CEOの名前が載っている(About)。
  • トラストセンターが公開されている。認証の状況、管理策、委託先(サブプロセッサー)の一覧が見られる(Typeless Trust Center)。

3. 話した内容はどこへ行くのか

音声と画面の文脈はクラウドで処理された直後に破棄され、手元に残るのは端末内の履歴だけだ。例外はCloud Syncをオンにした場合と、フィードバックを送った場合の2つ。

Typelessで話した内容の流れ。端末で話す、音声と文脈を暗号化してクラウドへ送る、委託先も保存・学習なしの契約でクラウド処理、結果を返したら破棄、履歴は端末内に保存期間を選んで残る。例外はCloud Syncとフィードバック送信
図1:Typelessで話した内容の流れ(公式のプライバシーポリシー・Data Controls・ヘルプをもとに作成、2026年11月7日確認)

図のとおり、送られるのは音声だけではない。Typelessは精度を上げるため、使っているアプリの名前や入力欄の関連テキストといった「限られた文脈(コンテキスト)」も一緒に処理すると説明している。コンテキストとは、どのアプリのどんな文章の続きを書いているかという周辺情報のことだ。

データ送られるかどこに残るか
音声送られるサーバーには残らない。端末の履歴からは元の音声を保存・共有できる(ヘルプの「Download audio」)
文脈(アプリ名・入力欄の関連テキスト)送られるサーバーには残らない
仕上がった文章(履歴)結果として端末に返る端末内。Cloud Syncをオンにするとクラウドにも保存
利用データ(IPアドレス、端末の種類、入力したアプリ名など)送られるリアルタイムに処理しサーバーには残さないと記載。総語数などの匿名の統計は保持
アカウント・支払い情報登録時に送るサービス提供と法令対応に必要な期間保持。カード情報は決済会社(Stripe・Apple・Google)が処理
フィードバック自分で送ったときだけ解決に必要な期間保持。同意した場合は改善に利用

見落としやすいのは「端末の中には音声も残りうる」点だ。公式ヘルプでは、履歴から元の音声をダウンロード(スマホでは共有)できると案内している(History & Dictionary)。共用のパソコンで使う場合は、履歴の保存期間を短くしておくとよい。

AIの委託先はどこか

プライバシーポリシーは、音声と関連テキストをMicrosoftやGoogleなどのクラウドAI提供元に送ると明記している。トラストセンターの委託先一覧(2026年11月7日確認)には、Gemini、Microsoft Foundry、OpenAI、xAI(Grok)、Groq、Fireworks AIがAI処理の用途で並び、所在地はいずれも米国だ。ほかにAmazon Web Services(クラウド基盤)、Mixpanel(分析)、Stripe(決済)なども載っている。

4. 求められる権限の意味

Macでは「アクセシビリティ」と「マイク」の2つを許可する。アクセシビリティは、カーソル位置に文字を入れることと、Fnキーで入力を始めることに使うと公式は説明している。

権限公式の説明オフにすると
アクセシビリティ(Mac)Slack・Teams・Googleドキュメント・Notionなど、カーソルのある場所に文字を直接入れるため。Fnキーで入力を始めるため話しても文字が入力されない
マイク(Mac・Windows・スマホ)声を取り込んで文字にするため声が聞き取られない

アクセシビリティ権限とは、ほかのアプリの画面や入力欄を操作できるようにするmacOSの許可のことだ。強い権限なので、入れる前に「何のために使うか」を公式で確かめておくのは正しい姿勢だ。ショートカットを押してから話し、もう一度押すと文章が入る使い方(初期設定はMacがFnキー、Windowsが右Altキー)は公式の手順に書かれている(Dictate)。

iPhone・Androidではキーボードとして追加して使う。スマホで求められる権限の詳しい説明は、2026年11月7日時点の公式ヘルプセンターには見当たらなかった。追加するときに端末に表示される内容を確認してほしい。

5. 安全に使う設定の手順

設定で変えられるのは「履歴の保存期間」「Cloud Sync」「フィードバックの扱い」の3つ。あとは話す内容の線引きで守る。

  1. 履歴の保存期間を決める。アプリの「History」で「Keep history」を開き、無期限・1年・1か月・1週間・24時間・保存しない、から選ぶ。共用のパソコンや仕事用なら「24時間」か「保存しない」が目安だ。
  2. Cloud Syncは必要なときだけオンにする。Cloud Syncは2026年8月26日のアップデート(Mac・Windows V2.4.0、iPhone・Android V2.5.0)で加わった機能で、オンにすると履歴の文章がクラウドに保存される。オフにすると、クラウドに保存された文章は削除されると公式は説明している。料金ページではProプランの機能として載っている。
  3. 不要な履歴を消す。履歴の一件ごとに「Delete transcript」、まとめて消すときは右上のメニューから「Delete all」を選ぶ。
  4. フィードバックに機密を入れない。フィードバックを送ると診断情報が送られ、同意した場合は改善に使われる。誤認識の報告に、顧客名や社内情報が入った文章を添えない。
  5. 話さない情報を決めておく。パスワード、カード番号、未公開の機密は音声入力しない。次の図の線引きをチームで共有しておくと迷わない。
  6. 使わなくなったらデータの削除を依頼する。データの削除や開示の依頼は、プライバシーポリシーに載っている窓口へメールで送る。
Typelessに話してよい内容の目安。公開済みの情報や一般的な下書きはそのまま使ってよい、顧客名や社内会議メモは会社のルールを先に確認、パスワード・カード番号・未公開の機密・BAAなしの患者情報は話さない
図2:Typelessに話してよい内容の目安(LIF Tech編集部作成)

6. 会社で使う前に確認したいこと

会社で使うなら、個人の判断で入れる前に、情報システム担当にDPA・委託先一覧・データの移転先(米国)の3点を見せて許可を取るのが近道だ。

DPA(データ処理契約)とは、個人データを預ける側と預かる側が、扱い方を取り決める契約のことだ。Typelessは公式サイトにDPAのページを用意している。確認の流れは次のとおり。

  1. 社内の規程で、クラウドの音声入力・文字起こしツールが許可されているか確かめる。
  2. プライバシーポリシー、Data Controls、DPA、トラストセンターの委託先一覧を情報システム担当に渡す。
  3. データが米国に移転して処理されること、利用規約の準拠法が米国カリフォルニア州法であることを伝える(利用規約)。
  4. SSO(シングルサインオン)、監査ログ、HIPAAの管理が必要なら、Enterpriseプラン(個別見積もり)を営業に問い合わせる。料金ページでは、これらはEnterpriseの機能として載っている。
  5. 許可が出たら、第5章の設定(履歴の保存期間・Cloud Sync)をチームで揃える。

注意:トラストセンターではSOC 2 Type IIが「進行中」と表示されている(2026年11月7日確認)。取引先から「SOC 2の報告書」を求められる業務では、現時点では提出できない可能性がある。ISO 27001の認証書やポリシー類は、トラストセンターから申請して入手する形式だ。

7. つまずきやすい点と対処

「急に入力されなくなった」の多くは、権限・マイク・ショートカットの3つのどれかが原因だ。公式ヘルプの対処を順に試す。

症状主な原因対処(公式ヘルプ)
話しても文字が入力されないアクセシビリティ権限が外れたシステム設定 → プライバシーとセキュリティ → アクセシビリティでTypelessを一度オフにしてからオンに戻す
「Microphone unavailable」と出るOSのマイク許可、会社のセキュリティソフト、別アプリのマイク占有Windows 11は設定 → プライバシーとセキュリティ → マイクで3つの許可をオン。会社のPCはIT管理者にブロックの有無を確認。会議アプリを閉じる
Fnキーで始まらないキーに別の機能が割り当てられているシステム設定 → キーボードで同じキーの割り当てを外すか、Typelessの設定で別のショートカットに変える
長く話していたら止まった1回の入力は9分まで8分で60秒のカウントダウンが出る。止まった分は履歴に保存される
前に話した文章が見つからない履歴の保存期間を過ぎた保存期間を過ぎた履歴は自動で消える。必要なら保存期間を延ばす

出典:permission issues/Microphone unavailable/system setting conflicts/dictation limit/missing transcript(2026年11月7日確認)

8. ほかの音声入力AIとのデータの扱いの違い

「学習に使わない」を初期状態から明記しているのはTypelessとSuperwhisperで、Wispr Flowは無料・Proプランで学習への利用が初期オンになっている。オフラインで処理できるのはSuperwhisperのローカルモデルだ。

アプリ処理の場所学習への利用サーバーへの保存
Typelessクラウド使わない(フィードバックは同意時のみ)しない(Cloud Syncオン時は履歴の文章のみ)
Wispr Flowクラウド無料・Proは初期オン。設定でオフにできる。Enterpriseはオフで固定「Dictation cloud storage」が初期オン。オフにできる
Aqua VoiceクラウドPrivacy Modeがオフのとき、音声と文字を保存して提供・改善に使うと記載Privacy Modeがオンなら保存しない
Superwhisper端末内(ローカルモデル)かクラウドを選ぶ使わないクラウドモデルも処理後は保存しない

出典は各社の公式ページ(2026年11月7日確認)。料金や対応OSも含めた比較は音声入力AIアプリ比較【2026年】4社の料金・対応OS・学習設定で詳しく扱っている。

9. 欠点・制限事項(わからないこと)

  • 「破棄した」ことを利用者が確かめる方法はない。ゼロデータ保持は公式の説明であり、第三者の監査報告(SOC 2 Type II)はトラストセンター上でまだ「進行中」だ。
  • オフラインでは使えない。文字起こしは常にクラウドで行うため、通信が切れると入力できない。
  • データの処理場所を日本に指定できるとの記載はない。プライバシーポリシーは米国への移転を前提にしている。
  • スマホで求める権限の説明が公式ヘルプにない。Macの権限は説明があるが、iPhone・Androidのキーボードとしての権限は2026年11月7日時点で個別の記事を確認できなかった。
  • 2026年2月の解析投稿の内容は検証されていない。元の解析の手法や証拠は公開されておらず、本記事でも真偽は判断していない。
  • 無料プランの週あたりの語数上限は、公式ページに具体的な数字がない。

10. よくある質問

Q. Typelessは中国の会社?

A. 公式のAboutページでは、運営会社はSimply CA LLC(米国カリフォルニア州パロアルト)で、スタンフォード大学の卒業生が創業したと記載されている。利用規約の準拠法もカリフォルニア州法だ。

Q. 話した音声はAIの学習に使われる?

A. 公式は、音声入力のデータをTypelessも第三者も学習に使わないと明記している。例外は自分で送ったフィードバックで、明示的に同意した場合だけ、仮名化した文章や修正内容が改善に使われる。

Q. オフラインで使える?

A. 使えない。Typelessは精度と速さのために文字起こしを常にクラウドで行うと説明している。ネットがない場所で音声入力したい場合は、端末内で動くモデルを選べるSuperwhisperなどを検討する。

Q. 履歴はどこに保存される?

A. 初期状態では端末の中だけに保存される。保存期間は無期限から保存しないまで選べる。Cloud Syncをオンにした場合だけ、履歴の文章がクラウドにも保存され、オフにするとクラウドから削除される。

Q. 会社のパソコンに入れても大丈夫?

A. 社内規程と情報システム担当の判断が先だ。データが米国で処理されること、委託先にMicrosoftやGoogleなどのAI提供元が含まれること、SOC 2 Type IIが進行中であることを伝え、DPAと委託先一覧を見せて許可を取る。

まとめ

Typelessは、音声と画面の文脈をクラウドで処理し、結果を返したら破棄する、学習にも使わない、と公式に明記している音声入力AIだ。運営会社は米国のSimply CA LLCで、ISO 27001は準拠、SOC 2 Type IIは進行中と表示されている。2026年2月の「危険」騒動の指摘のうち、クラウド処理であることは事実だが、権限は公式手順上マイクとアクセシビリティの2つだ。安全に使えるかどうかは、設定と「話さない情報」の線引きで決まる。

今すぐできるアクション:

  1. 今日:Typelessの「History」で履歴の保存期間を見直し、仕事で使うなら「24時間」か「保存しない」にする。Cloud Syncがオンになっていないかも確かめる。
  2. 今週:図2を参考に「話してよい情報・確認が要る情報・話さない情報」をチームで決め、会社で使うならプライバシーポリシー・DPA・委託先一覧を情報システム担当に渡す。
  3. 来月:トラストセンターでSOC 2 Type IIの状況が変わっていないか確認し、利用範囲を広げるかどうかを決める。

本記事の内容は、2026年11月7日にTypelessの公式サイト(プライバシーポリシー・Data Controls・利用規約・About・料金ページ・ヘルプセンター・リリースノート)とトラストセンターで確認したもの。2026年2月の騒動については個人の記事をもとに記載しており、編集部による通信の解析は行っていない。仕様・認証の状況・委託先は変わることがあるため、最新の情報は本文中のリンク先で確認してほしい。

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出典

この記事を書いた人

佐藤祐介(株式会社LIFRELL 代表取締役)

佐藤 祐介

株式会社LIFRELL 代表取締役

業界歴15年マーケティング支援 累計500社以上うちD2C支援 150社以上担当商材 300以上

オプト、電通デジタルを経て、2018年に株式会社LIFRELLを設立。広告運用、動画・バナー制作、Webメディアの運営にAIを実務で使っています。LIF Techでは、その現場で試したこと・失敗したこと・数字で確かめたことを公開しています。

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